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更新日:2016年5月19日

スギ樹勢衰退とその要因に関する研究

研究報告No.13(要旨)

の研究は茨城県内で生じているスギの樹勢衰退について、その実態の把握、衰退に関与する基礎的要因の解析及び衰退の直接的な要因の解明を目的として行ったものである。以下に得られた調査及び解析結果をとりまとめた。

1.スギ樹型の相異をもとに県内全域について、スギ健全度の地域区分を行ったところ、衰退の認められる健全度3及び2の地域は、県土面積の42%に相当し、主に低海抜地域で衰退は進行している。しかしその地域でも起伏の大きい場所や広い林地が分布する場所では、スギの生育は良好である。

2.0.5ha以上のまとまりを持つスギ林分が分布する地域を抽出し、衰退の状況を検討すると、衰退の認められる健全度3及び2は全体の11%にすぎず、衰退は小面積のスギ林分で著しいことが明らかになった。衰退に関与する基礎的要因を解析した結果、スギの衰退が進行している地域は、気候的には降水量が少なく、その上温量指数が大きいため、他の地域より土壌は乾燥しやすい条件にある。また地形的な特徴では傾斜がゆるく、谷密度・起伏量はともに少ないため、比高のある山地に比べ土壌の水分条件は良くない。土地利用の点では市街地の割合が高く、林地の割合が少ないため雨水の地中への還元が山地より少ないと考えられる。
これは地域的には表層地質が洪積統のローム又は沖積統の未固結堆積物・泥といった第四系で、地形はローム台地・段丘あるいは三角州性低地の場所が該当し、森林立地区分では台地及び低地立地区に属している。
スギの生育には土壌中の水分・空気・養分がともに十分であることが必要とされているが、衰退の進行している地域は元来、土壌中の水分の状態が県北部の山地に比べ良好ではないと考えられる。事実、衰退が主に進行している台地及び低地立地区は、スギの生長量が他の立地区に比べ著しく劣っている。このようにスギの衰退は、元来スギにとっての立地条件が必ずしも良くない地域で顕著である。

3.立地条件が類似するが、衰退程度の異なる5地点を比較して、衰退に直接関与する要因を調べた結果、土壌及びスギの栄養生理的な状態からは直接的な要因が確かめられず、踏圧の影響と大気汚染及びチリ・ホコリの影響が確認された。

4.過去からの生育の経過を年輪構造の解析により検討したところ、工業地帯からの大気汚染及び地下水位の変動が衰退の直接的な要因として認められた。しかしその影響はスギの生育場所の条件によりかなり異なることが明らかにされた。

5.そのため県内で認められるスギの衰退は、人間の経済活動の拡大に伴い主に地形的に平担な低海抜地域で生じている環境の変化、例えば(1)道路・工場・住宅等の建設に伴う林地の減少と市街地の増加、(2)交通量の多い道路沿いでの自動車の排気ガス、チリ・ホコリの増加、(3)工場等から発生する大気汚染、(4)地不水位の変動、(5)林地に対する踏圧の影響の増加等により、もともとスギの生育にとっての立地条件があまり良くない地域を中心に進行していると考えられる。

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