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更新日:2020年6月22日
平成23年12月
きのこ特産部
図-1 ツチヒラタケの菌床 |
林業技術センターでは,シイタケ等の既存の栽培きのこ類と競合しない新たな品目の栽培化を目的として,様々な食用野生きのこ類の栽培試験を検討しています。
ツチヒラタケは,夏~秋,草地,林地等に発生するきのこで,県内では比較的珍しい種と考えられます。全国で栽培された報告はありません。
今回,バーク堆肥を主材料とした培地にツチヒラタケの菌糸を培養したもの(以下,菌床 図-1)を林地およびプランターに埋め込む2つの栽培形式で露地栽培を行った結果,夏季に高収量のきのこを発生させることに成功したので紹介します。
研究開発トピックス「新しいきのこツチヒラタケの栽培化」では,平成20年度から栽培を開始して2年目発生の途中経過を紹介しましたが,2年間の総収量は,培地重量の81%に達しました(図-2,表-1)。「培地重量の8割」は,他の栽培種(ハタケシメジを例にした場合の総収量は3割程度)と比べても,極めて高い収量です。なお,3年目の発生はありませんでした。2年間の発生時期は,6月上旬から11月上旬までの長い期間となり,他の競合種の少ない7~9月の夏季に集中して発生が認められました。
図-2 林地栽培の発生状況 |
ツチヒラタケの新たな栽培方法として,平成21年度から,栽培条件を管理しやすく伏せ込み後の移動が可能な「プランター栽培技術」も検討しました(図-3)。その結果,6月から11月に2年間発生し,総収量は,林地栽培試験よりも劣るものの,培地重量の42~55%の比較的高い収量を得ることができました(表-2)。また,菌床上面の被覆資材として,赤玉土(大粒)や鹿沼土(大粒)を用いると,発生開始の時期が早まり,増収効果が認められました。
図-3 プランター栽培の発生状況 |
ツチヒラタケの林地およびプランターを利用した菌床露地栽培を行った結果,高収量で夏季にきのこが多く発生するなど,従来の栽培種と比べて有利な性質が明らかとなりました。このため,食用菌として普及することができれば,農山村の新たな収入源として期待できます。
しかし,本種は知名度が低く,生態等に関する知見も十分蓄積されていないことから,引き続き市場性に関する情報収集や栽培技術の改良に努め,実用性をさらに検討していきたいと考えています。
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