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更新日:2024年9月30日

薬剤耐性菌による感染症の発生状況

 茨城県における感染症発生動向調査事業の結果から、薬剤耐性菌による感染症の発生状況についてまとめました。感染症発生動向調査事業については、感染症情報センターホームページをご参照ください。
 なお、薬剤耐性菌による感染症とは、感染症法に基づく以下7疾患を指します。

全数把握対象疾患(4疾患)
  • カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症
  • ​​​​​​バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)感染症
  • バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症
  • 薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)感染症
定点把握対象疾患(3疾患)
  • ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
  • メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
  • 薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症
過去10年間の茨城県における年次別報告数(2014年~2023年)

AM

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症

 カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症は、メロペネムなどのカルバペネム系薬剤及び広域β-ラクタム剤に対して耐性を示す腸内細菌目細菌による感染症です。主に感染防御機能の低下した患者や外科手術後の患者、抗菌薬を長期にわたって使用している患者などに感染します。
CREは、複数の系統の薬剤に耐性であることが多く、薬剤耐性遺伝子がプラスミドの伝達により複数の菌種に拡散するなど、臨床的にも疫学的にも重要な薬剤耐性菌として国際的に警戒感が高まっています。
 国内のCRE感染症報告数は、2018年以降、年間約2,000例前後とほぼ横ばいで経過しており、本県においても、2019年以降ほぼ横ばいで経過しています。

CRE報告数グラフ

2023年に報告のあった症例について

図1.CRE感染症症例の性別/年代別報告状況(2023年、n=54)

CRE性別・年代別グラフ

  • 2023年に報告のあったCRE感染症症例のうち、36例(67%)が男性であり、年代別では、60歳代以上の報告が多かった

 

表1.CRE感染症症例の届出時点における症状(重複あり)、2021年~2023年CRE症状

  • 2023年に報告のあったCRE感染症症例の届出時点の症状は、胆嚢炎/胆管炎が24例(44%)と最も多く、尿路感染症16例(30%)、菌血症/敗血症14例(26%)の順に多かった

 

表2.CRE感染症症例の菌検出検体(重複あり)、2021年~2023年
CRE菌検出検体

  • 2023年に報告のあったCRE感染症症例の菌検出検体は、血液が19例(35%)と最も多く、尿16例(30%)、喀痰4例(7%)、腹水2例(4%)、膿1例(2%)の順に多かった

 

表3.CRE感染症症例の分離菌種(重複あり)、2021年~2023年
CRE菌種

  • 2023年に報告のあったCRE感染症症例の分離菌種は、Klebsiella aerogenesが31例(57%)と最も多く、Enterobacter cloacae15例(28%)、Klebsiella pneumoniae3例(6%)の順に多かった

バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)感染症

 バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)感染症は、バンコマイシン耐性を示す黄色ブドウ球菌による感染症です。バンコマイシンは、多くの抗菌薬に耐性をもった菌にも効果があるとされ、治療に用いられていますが、長期投与を続けることでバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌が発生する可能性があります。
 VRSA感染症は世界的にも稀で、日本国内では確認されておりません。

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症

 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症は、バンコマイシンに対して耐性を示す腸球菌による感染症です。腸球菌は様々な抗菌薬に耐性があり、効果がある抗菌薬としてバンコマイシンを用いた治療が行われていますが、そのバンコマイシンに対し耐性を獲得した腸球菌に感染することで発生します。
 主な感染経路は接触感染で、手洗いや消毒が不完全な場合、汚染された医療器具や医療従事者の手などを介して院内感染を起こすこともあります。
 国内のVRE感染症報告数は、2011年以降100例未満で推移していましたが、2020年には136例と過去最多となりました。本県においては、過去10年間で計3例と、報告数0例の年もありますが、今後の動向に注意が必要です。

VRE

薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)感染症

 薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)感染症は、通常のアシネトバクター感染症の治療に使用する抗菌薬である広域β-ラクタム剤、アミノ配糖体、フルオロキノロンの3系統の薬剤に対して耐性を示すアシネトバクター属菌による感染症です。アシネトバクター感染症は、健康な人が発症するのは稀であり、免疫が低下した人などが発症するいわゆる日和見感染症です。
 国内のMDRA感染症報告数は、2016年以降減少傾向にあり、2020年以降は年間10例前後で推移しています。本県においても、過去10年間で計6例と低い水準で推移していますが、MDRA感染症が1例確認された場合には、アウトブレイク対応が必要です。


​​​​MDRA

ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症

 ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症は、ペニシリンに耐性を示す肺炎球菌による感染症です。肺炎球菌は健常者の口腔内に常在していることが多く、通常は無症状ですが、乳幼児の化膿性髄膜炎や小児の中耳炎、肺炎、高齢者の肺炎などの原因菌となります。
 国内のPRSP感染症の定点当たり報告数は、2005年以降は概ね減少傾向が継続しており、本県における近年のPRSP感染症報告数は、10例未満となっています。

PRSP

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症は、メチシリンなどのペニシリン剤をはじめとして、広域β-ラクタム剤、アミノ配糖体、マクロライド剤などの多くの薬剤に対し、多剤耐性を示す黄色ブドウ球菌による感染症です。黄色ブドウ球菌は、健康な人の常在菌で皮膚や鼻腔内に存在し、通常は無症状ですが、免疫力が低下した人などでは様々な疾患の原因となります。
 国内のMRSA感染症定点当たり報告数は、近年ほぼ横ばいで経過しており、本県のMRSA感染症報告数も横ばいとなっています。

MRSA

2023年に報告のあった症例について

図1.MRSA感染症の性別/年代別報告状況(2023年、n=332)

MRSA_性別・年代別

  • 2023年に報告のあったMRSA感染症症例のうち、209例(63%)が男性であり、年代別では、70歳代以上の報告が多かった

表1.MRSA感染症症例の菌検出検体、2021年~2023年
MRSA_検体
 ※1気道検体:喀痰、留置カテーテル(気管)、気管支洗浄液
 ※2その他:留置カテーテル(体腔内/血管/その他)、その他

  • 2023年に報告のあったMRSA感染症症例の菌検出検体は、気道検体が129例(39%)と最も多く、血液55例(17%)、尿・カテーテル尿21例(6%)、創部13例(4%)の順に多かった

薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症

 薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症は、通常の緑膿菌感染症治療に用いられる抗菌薬である広域βラクタム剤、アミノ配糖体、フルオロキノロンの3系統の薬剤に対して耐性を示す緑膿菌による感染症です。緑膿菌は、水回りなどの生活環境中や人の口腔内・腸管内に常在しており、通常は無症状ですが、免疫力が低下した人の場合、敗血症や肺炎、尿路感染症などの感染症の原因となります。
 国内のMDRP感染症定点当たり報告数は、近年横ばいで経過しており、本県のMDRP感染症報告数は、10例~15例前後で推移しています。

MDRP​​​​

このページに関するお問い合わせ

保健医療部衛生研究所企画情報部

〒310-0852 茨城県水戸市笠原町993-2

電話番号:029-241-6652

FAX番号:029-243-9550

保健医療部衛生研究所細菌部

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