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更新日:2020年8月28日
青年海外協力隊として平成28年10月にフィリピンへ派遣された本県出身の金子昌裕隊員から、現地での活動の様子についてレポートが届きました。
茨城県では、派遣隊員の皆様を「茨城県国際親善大使」として委嘱し、茨城県と世界との架け橋として活動していただいております。
Kumusta ka?(お元気ですか?)
私は茨城で看護師として救急センターと手術室に勤務していました。
医療スタッフが最善を尽くしても、救うことができない命をこれまでに沢山見て「人生は短い、明日はどうなるかわからない」ということを感じ、自分が生きているということに感謝し、興味のあることに挑戦したいなという気持ちが強くなりました。その興味の一つが青年海外協力隊への参加でした。
小学校での感染・環境教育
私の任地のレイテ島のタクロバン市は約25万人の港町であり、東ビサヤ地域の主要都市になります。フィリピンの言語といえばタガログ語が公用語で有名ですが、ここタクロバン市周辺ではワライ語という言語が話されています。第二次世界大戦の激戦地としてや、2013年の超大型台風「ヨランダ」で約6千人が亡くなった被災地として名前を聞いた方も多いのではないでしょうか?
私の配属先のEastern Visayas Regional Medical Center(以下EVRMC)は台風ヨランダにより被害を被ったためJICAの無償資金協力によって建てられた外来棟、フィリピン政府によって現在建設中の本館、外傷センター、母子センター、がんセンターを構える第三次医療施設(高度な医療施設を有している病院)に今生まれ変わろうとしています。ベッド総数は1500床以上を構え、フィリピン国内では有数の大きさを誇り、また日本の大病院と比較してもひけを取らない、あるいはそれらを上回る大きさです。そんな中、フィリピン人の同僚たちは忙しいながらも定時に仕事を終え、家族や大切な人と時間を過ごします。そして楽しみながら仕事をしていてニコニコと笑顔が絶えません。
私の活動要請内容は病院内での5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)強化というものです。日本で5Sは工場のみならず、オフィスや病院でも時間の有効活用、仕事の無駄を削減、感染対策、安全対策などにつながり職場環境の質の維持するためるため積極的に取り組んでいる所も多いでしょう。しかし赴任先の病院では心肺停止の患者に対して使用する大事な薬剤やアイテムも使用後に次の急変時を見据えて補充をすぐ行うことができず急変した患者さんへ使用するカートの中に不必要な薬剤やアイテムが沢山入っており、逆に必要な薬剤やアイテムが配置されていない現状がありました。
赴任後、優先度を考え救急センターでの5S活動から始めました。救急センターで必要な薬剤やアイテムが無かったり、すぐに使用できないということは患者さんの命を救うことができない可能性が高まるため、早急な5Sの導入が必要だと考えたためです。ちょうど同じタイミングで救急センター長の医師が赴任し、救急センターでの5S活動を支持・協力していただき、医師・看護師・薬剤師と話し合い救急カートに入れる薬剤やアイテムを配置することができました。
その後、患者急変の際発令されるコードブルーチームの立ち上げ、心肺蘇生の手技の確認、全科救急カートの配置、ISO取得に向けた活動、感染対策・安全につながる5S活動を病院内で完全対策チームとワーキングコミッティチームとともにおこなっています。その他にも院内の診察の待ち時間を利用し患者さんに対しての感染対策・環境についての教育をスタッフと共に定期的に行っています。
コードブルーチーム(院内急変対応)
いつも5S活動に協力していただいている感染対策チーム
5Sというものを多くの人たちに知っていただくため病院の102周年式典に絡めて、5Sミスコンテストを実施しました。これは外見や人格だけではなく5Sに対する知識が審査対象となるビューティーコンテストです。従業員2000人の中でから選ばれた最終候補者は最終13人。病院内で大変な盛りあがり。審査項目の一つに、病院内の不要なプラスティックを収集し、それの重量によってポイントが加算されるというものがありました。しかし各最終候補者の職場の同僚達は、自分たちの職場の候補者に高ポイントを付けるために、病院内のプラスティックだけでなく自宅や町中からプラスティックを拾ってきてしまい病院がプラスティックのゴミで溢れてしまいました。ゴミを収集するという環境面では良かったかもしれませんが、病院の感染対策の観点からもこれらは良いことではありません。
これに怒った病院長や看護局長。クレームが私たちにつけられました。当然のことですが、私たちは各部署に案内文で“病院内のゴミ”という一文を付けたのにも関わらず、フィリピン人の同僚たちを勝たせるために手段を択ばない仲間意識の強さを計算していませんでした。笑
病院に求められる5S活動とは何なのかということを正しくスタッフが認識し、それを継続していけるかが私たちEVRMCにとっての今後の課題です。
現地の文化・習慣・宗教・生活を尊重し受け入れるということは、看護師と患者様の関係にも似ていると感じる毎日です。経済大国である日本と比べると金銭的には決して任地は裕福とは言えませんが、みんな笑顔で助け合っているフィリピンの人々を見ると果たして「Quality of life(生活の質)」はどっちの方が豊かなのかということをいつも考えさせられます。また青年海外協力隊任期中は良い意味/悪い意味でも日本では経験できないような出来事が沢山おき、そのたび自身の喜怒哀楽が揺さぶられますが、これもまた楽しい人生なのではないでしょうか?残りの任期も、フィリピン人の仲間と患者さんの命を少しでも守れるような活動をしていきたいと思います。
患者さんの診療待ち時間を利用しての環境・感染の教育
JICAボランティア平成28年度2次隊
青年海外協力隊
金子昌裕
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