平成24年第2回定例会で可決された意見書・決議
《意見書》
- 竜巻等被害からの再建に関する意見書
- 神栖市における有機ヒ素化合物による環境汚染及び健康被害に係る緊急措置事業の継続を求める意見書
- 尖閣諸島の実効支配を推進するための法整備を求める意見書
- 北朝鮮による日本人拉致問題の早期解決を求める意見書
- 早稲田大学新設医学部の県畜産試験場跡地への誘致に関する決議
- 東京電力株式会社の電気料金値上げに関する意見書
- 東京電力福島第一原子力発電所事故による放射線被ばくの健康影響に関する意見書
竜巻等被害からの再建に関する意見書
さる5月6日の竜巻等により,本県においては中学生が死亡し,42名が負傷したほか,住宅等1,300棟を超える甚大な被害が発生しました。
特に経済産業省の「新・がんばる商店街77選」にも選出されているつくば市の北条商店街では,90店舗のうち61棟が被害を受けており,また,農作物や農業施設の被害額は5億1千万円を超えるものと推計されるなど,極めて深刻な被災状況にあります。
さらに,昨年の東日本大震災や福島原発事故による影響が未だに大きく残る中で今回の災害が発生したことから,また緒についたばかりの震災からの復興とあわせ,県民は多くの困難に直面しております。
このようなことから,被災地として依然厳しい本県の状況を十分にご理解頂き,下記の事項について特段の措置を講じられるよう強く要望します。
記
- 被災者生活再建支援法の対象となる自然災害の適用基準を拡大するとともに,竜巻災害については,屋根の滅失などにより居住できなくなるといった被害の特殊性を考慮し,住家の被害認定基準の柔軟な運用を図ることにより支援法の対象とする等,制度の見直しを進めること。
- 竜巻等により被災市町村の処理能力を超える膨大な量の災害廃棄物が発生していることから,災害廃棄物の処理が迅速に進むよう,被災市町村を支援すること。
- 被災市町村においては,東日本大震災に続いて竜巻等による二重の苦難を被っていることから,被災市町村の財政負担の軽減を図るため,災害廃棄物の処理に要する費用の全額を国が負担するなど東日本大震災に係る特例措置並の財政支援措置を講じること。
- 被害を受けた中小企業や商店街の復旧・復興は長期化することが予想されるため,資金の調達など支援策を講じること。
- 被災した中小企業,商店街の復旧・復興に向けた新たな助成制度を創設するなど支援策を講じること。
- 降雹・竜巻・突風・集中豪雨による農業被害の救済を行うこと。
特に,パイプハウス等農業用施設の被害が甚大であり,経営の維持が困難であることから,農業用ハウス等の再建・修繕への助成について,補助率を1/2とするなど,更なる支援の充実を図ること。
また,竜巻により農地にガラス片等,危険性のあるがれきが飛散し,営農上支障が生じている農地の復旧については,人的な負担の分も含め,十分な財政的支援を行うこと。
神栖市における有機ヒ素化合物による環境汚染及び健康被害に係る緊急措置事業の継続を求める意見書
神栖市において,平成15年に旧日本軍に由来する可能性が高い有機ヒ素化合物であるジフェニルアルシン酸が検出されて以来,国,県及び市は一丸となって,住民の健康診査をはじめとする健康被害者に対する支援,地下水の浄化処理などの各種対策を実施してきた。
この度,この件について,公害等調整委員会から県の賠償を命じる責任裁定が行われたが,県では,健康被害を受けられた住民がこれまで長期にわたり苦しんでいることから,提訴せず和解による早期解決を図ることとしたところである。
しかしながら,被害を受けられた住民の健康に対する不安は,依然として払拭できない状況にあることから,同裁定において,ジフェニルアルシン酸を製造し,これについて一定の管理責任があると認められた国の責務として,平成15年6月の閣議了解等による,健康診査の実施,医療費の公費負担,療養手当の支給など,現行の健康被害に係る緊急措置事業を,期限を限定せず継続するよう,強く要望する。
尖閣諸島の実効支配を推進するための法整備を求める意見書
尖閣諸島はわが国固有の領土であることは歴史的・国際法的に明確であるが,中国が不当に領有権を主張している。このまま放置すればわが国の領土保全は極めて不安定な状況になる恐れがあり,尖閣諸島の実効支配を早急に強化し「尖閣を守る」国家の意思を明確に示す必要がある。
また,わが国は世界第6位の排他的経済水域面積を有し,豊富な海底資源を保全し,国益を守るためにも国境となる離島の保全・振興,無人島となっている国境の島の適切な管理を進めていく必要がある。
よって,政府及び国会にあっては海洋国家日本の国益を保全するため,下記事項の実現を速やかに進めるよう強く求める。
- わが国の領土・主権を毅然たる態度で守る意志を内外に明確にするため,領域警備に関する必要な法整備を速やかに講じること。
- わが国の領土主権・排他的経済水域等の保全上,重要な離島を振興する新法を制定すること。
- わが国の領土主権・排他的経済水域等の保全上,重要な無人島について国による土地収用の係る措置等を定めた新法を制定すること。
北朝鮮による日本人拉致問題の早期解決を求める意見書
平成14年,北朝鮮は拉致を認めて5人の被害者を返した。しかし,その時以降,5人の被害者の家族の帰還以外まったく進展はない。北朝鮮の地でわが国からの救いの手を待っている被害者らの苦しみと日本の地で帰りを待つ家族の苦痛も10年延長した。
政府は現在,17人を北朝鮮による拉致被害者として認定している。それ以外に,いわゆる特定失踪者をふくむ多くの未認定被害者が確実に存在する。このことは政府も認めている事実だ。
平成18年以降,政府は首相を本部長とする対策本部を作り担当大臣を任命して被害者救出に取り組んでいるが,いまだ具体的成果を上げることができていない。
昨年末,拉致の責任者である金正日が死んだ。北朝鮮が生きている被害者を死んだと言わざるを得なかったのは,独裁者金正日の責任を認めたくないためだった。その金正日の死は,後継金正恩政権の不安定さを含め救出の好機となり得る。金正恩政権に強い圧力をかけ,実質的交渉に引き出さなければならない。
一方で,混乱事態が発生し被害者の安全が犯される危険も出てきた。混乱事態に備えた対策も早急に検討しなければならない。
拉致問題は重大な主権侵害でありかつ許し難い人権侵害であることは言うまでもない。政府は,今年を勝負の年として,全精力を傾けてすべての拉致被害者を早急に救出するように強く要望する。
早稲田大学新設医学部の県畜産試験場跡地への誘致に関する決議
本県の人口10万人当たりの医師数は,全国平均の230.4人(平成22年)に対し,166.8人と全国最下位クラスの46位に低迷しており,この状況が長年にわたり続いている。
特に県北,鹿行地域等の医師数については,全国平均の半分にも達していない。
このような医師の絶対数の不足により,今後,全ての県民が等しく十分な医療を受けられないことも危惧され,県民の将来への不安が高まっている。
この危機的な状況において,県としては,厳しい財政状況の中,年間10億円以上もの予算を措置し医師確保に努めているが,現状は依然として困難なものとなっている。
こうしたなか,本県の中央部に位置する笠間市には,医学部の立地に適した県畜産試験場跡地(県有地:約35ヘクタール)があり,当該地に医師不足解消を図るため,早稲田大学新設医学部を誘致することは,先進・高度医療や研究機関としての拠点が形成され,近隣の県立中央病院をはじめ県内医療機関との連携とあいまって,本県の医師確保,医療体制の充実及び医療水準の向上に極めて有効である。
よって,茨城県議会は,早稲田大学新設医学部の県畜産試験場跡地への誘致を強く求めるものである。
東京電力株式会社の電気料金値上げに関する意見書
今回の大震災では,本県も甚大な被害を受けたほか,福島第一原子力発電所の事故は,依然として県内産業に暗い影を落としており,一日も早い復興に向けて,県民,企業それぞれが懸命の努力を続けている。
また,歴史的な円高水準の下,企業は一段と厳しい経営状況に置かれており,コストダウンに向けた様々な努力を重ねている。
こうした中,さる5月9日に東京電力株式会社が原子力損害賠償機構と共同で策定した「総合特別事業計画」が国の認定を受けた。
この計画は,追加的なコスト削減や,事業運営体制の改革として社内カンパニー制の導入が盛り込まれる等,一定の前進が認められるものの,大幅な電気料金の値上げ等が前提となっているため,産業の空洞化を加速させ,中小企業等の経営悪化や雇用の喪失など地域経済に大きな影響を及ぼしかねないものであり,計画の実現には県民や企業等の理解と協力が不可欠である。
よって,被災地としての本県の現状を踏まえ,国におかれては,下記事項について特段の措置を講じられるよう強く要望する。
記
- 本県の企業,特に大口需要家など電気料金の値上げの影響が大きな企業,厳しい経営環境にある中小企業等に対して,コスト負担の軽減を図るため,国として特段の配慮を行うこと。
- 企業等が実施する節電や省エネルギー設備の導入,再生可能エネルギー導入等の取り組みに対し,支援の拡充を検討すること。
- 東京電力が申請した規制部門の電気料金値上げについて,料金値上げ幅の縮小を図るため,より一層の経営合理化について東京電力に対し指導するなどの対策を講じること。
東京電力福島第一原子力発電所事故による放射線被ばくの健康影響に関する意見書
東京電力株式会社福島第一原子力発電所で発生した事故は,大量の放射性物質を外部に放出し,食品,水道水,大気,海水,土壌等に拡散した。事故発生からすでに1年3ヶ月が経った現在もなお,通常時と比べて高い放射線が福島県のみならず,広範囲にわたり観測されている。
このような状況が長期間続いていることから,放射線被ばくによる住民の健康影響調査に関する対応方針を早急に策定することが求められているところである。
現在まで,放射線の健康影響調査については各自治体がそれぞれの判断や手法で対応してきているが,本来,国が基準や方針を示し,系統だてて実施すべきものである。
よって,政府及び国会においては,誰もが安心して暮らすことができるよう,下記の項目の早期実現について強く要望する。
記
- 放射線による住民への健康影響調査について,実施の必要性,対象者,実施内容,実施主体などに関する統一的な基準を早急に示すこと。
- 健康影響調査の実施の際には,各自治体と連携し,国が直接実施する体制を構築するとともに,関係自治体に負担を生じさせないよう,国の責任において万全の財政措置を講ずること。
- 放射線・放射性物質の人体影響,放射線防護の方法等に関する知識の普及啓発を図るなど,不安解消に向けた取り組みを積極的に行うこと。
- 原子力の安全規制を一元的に担う原子力規制庁を早期に発足させるとともに,早急に事故初期段階からの内部被ばく線量を推計し,健康リスクの評価を公表すること。
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