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更新日:2017年7月26日

週刊ホテルレストラン「HOTERES」(2014年6月27日発行)

週刊ホテルレストラン「HOTERES」(2014年6月27日発行)に掲載された記事からの転載です。

「なめんなよ♥いばらき県」
豊富な食材と観光資源を全国に発信

 大消費地に隣接し,豊富な食材や観光資源を持ちながらも,必ずしも知名度が高いとは言えないことが課題となっている茨城県。その現状を打破すべく,「なめんなよ❤いばらき県」をスローガンに掲げ,茨城県の魅力を積極的に発信することで認知度向上を目指している。

 本インタビューでは茨城県知事である橋本昌氏に,茨城の特に食材に関する魅力や,観光振興の取組みについて聞いた。

 

東京の市場関係者から「野菜王国」とも呼ばれる食の宝庫,茨城県

-まずは食材という観点で茨城についてお聞きしたいと思います。茨城県は食の宝庫を自負するほどさまざまな食材が生産されていると聞いています。

 茨城県は,温暖な気候と冷涼な気候の境に位置していることから,本県が北限,南限と言われる農産物も多く,しかも四季を通じて非常に多くの魅力的な食材が生産されているという特徴があります。事実,野菜を例にあげれば,茨城県は東京の市場関係者から「野菜王国」と呼ばれるほど種類も量も豊富で,年間を通じて彩り豊かな野菜が生産されています。野菜は鮮度が重要ですが,大消費地に隣接し新鮮でしかも良質な野菜を届けることができる点も茨城県の強みです。
 農産物だけではありません。茨城県の沖合は親潮と黒潮が交錯する「出会いの海」と言われ,寒暖両方の魚介類が漁獲できる好漁場となっており,海の幸にも大変恵まれています。

「つくれば売れる」から「喜んで食べてもらえる」へのシフト

-素晴らしいですね。そのような中でも橋本知事は農業改革を推し進められていると聞いています。どのような点が課題なのでしょうか。

 もちろん現在も多くの方に喜んで食べていただいているのは事実ですが,より消費者の視点に立った農業を目指そうと農業改革を進めています。「消費者のベストパートナー」とよく言っているのですが,安全安心・高品質な農作物を作るのは当然として,「どういうものが市場で求められ,消費者に喜ばれるのか」という考え方が重要であると思っています。例えば,現在茨城県が産出額全国1位のミズナですが,以前は茨城県では栽培されていませんでした。しかし,東京都中央卸売市場の方からの「ミズナの需要はこれから伸びていく」という情報に基づき,栽培に取り組んだ結果,4年で全国トップシェアとなりました。
 また,良いものを作って高く買っていただく取組みも進めています。まさに現在,最盛期を迎えているメロンは,例年6月には東京都中央卸売市場の取扱量の約7割を茨城県産が占めるほどですが,中でも茨城県オリジナル品種である「イバラキング」は,甘さだけでなく品の良い香りがあり人気です。また,オリジナル品種のイチゴ「いばらキッス」は,濃い甘さが特徴で東京の高級百貨店において高く評価されていますし,下妻の「甘熟梨」は,樹上で十分熟させることで糖度が高く風味があり高値で販売されています。このほか,皮ごと食べられるブドウとして注目を浴びている「シャインマスカット」などは一房1kgで1万円もします。

 

-これらの優れた食材を料理人等にPRする取組みや食材のブランド化,イメージアップの取組みはいかがですか?

 茨城県ではこれら優れた食材や特産品のイメージアップ,販売促進を図るため,著名な料理人の方に茨城県産の食材を使ってもらえるような取組みを推進しています。例えば,パティシエの鎧塚俊彦さんが渋谷ヒカリエで運営されている「Yoroizuka Farm TOKYO」では,茨城の特産品である干しいもを使ったプリンや,奥久慈卵を使ったブリュレ,先ほどのイバラキングやいばらキッスを使ったスイーツなどが並んでいます。
 このほか,首都圏の料理人の方々との連携を図り,お店での利用を促進していくため,銀座にあるアンテナショップ「茨城マルシェ」や都内の会場で茨城県産の食材を用いた料理の試食会を開催するとともに,都内のレストラン等で一定期間,茨城の食材フェアを開催してもらうなど,茨城の印象が強く残るような取組みも行っています。
 さらに,フードアナリストとして活躍されている藤原浩さんに「いばらき食のアドバイザー」として,客観的な立場から評価やアドバイスをいただきながら,茨城県産の食材のプロモーションに力を入れているところです。
 また,茨城県の銘柄牛肉である「常陸牛」は取扱店舗を一つ一つ増やし続ける地道な活動により,10年かけて出荷頭数を3.5倍にまで拡大することに成功しました。フェアのような目を引く取組みも大切ですが,一方で地道な活動がなければ一過性のもので終わってしまい成果にはつながりません。
 こうした活動の両方を継続しながら,茨城の持つ良さをより多くの方に知っていただけるように努力していきたいと思います。

食材だけでなく日本酒やビールも名品がそろう茨城県

-食材だけでなく,茨城県は日本酒も有名ですね。

 茨城には日本最古の蔵と言われる「須藤本家」をはじめ酒蔵が46あるのですが,これは関東で最多です。代表的なものとして須藤本家の「郷の誉」は,都内高級ホテルや,ニューヨーク,オーストラリアなど海外の有名レストランでも採用されていますし,来福酒造の純米吟醸酒「来福」は今月開幕するFIFAワールドカップ・ブラジル大会の公認日本酒の9銘柄の一つに認定されました。
 また,梅酒では月の井酒造店の日本酒仕込み「梅酒」がルフトハンザドイツ航空のファーストクラスとビジネスクラスで採用されているほか,水戸市の明利酒類の「百年梅酒」や木内酒造の「木内梅酒」は天満天神梅酒大会のそれぞれ第二回,第三回大会において日本一に輝いた実績を持っています。
 そして,日本酒や梅酒だけではありません,最近になってまた専門のレストランが人気となるなどブームが復活しているクラフトビールにおいても,木内酒造の「常陸野ネストビール」はワールド・ビアカップで2度の金メダル,ジャパンビアカップでも2年連続金メダルを受賞していますし,県内産大麦と国内産ホップで創った「NIPPONIA(ニッポニア)」も好評をいただいています。

 

-すごいですね。そして食材も含めこういった優れた商品をいかに海外に売り込んでいくかも課題ですね。

 先ほどの「常陸野ネストビール」はアメリカ産のビールと比較すると値段が4倍もするのですが,それでも海外で徐々に人気が広まっています。また,県内の農業法人が,タイのバンコクにおいて,日本人や現地の富裕層が比較的多く住む地域に,茨城県産農産物を扱う直売所の実験店舗を構えたのですが,そこでは1パック1800円もする茨城産のイチゴ500パックがすぐ売り切れてしまいました。輸送費などまだ課題はありますが,今後もジェトロなどとも連携を図りながら,茨城県産農産物などの輸出に向けた取組みを支援していきたいと考えています。

幅広い観光資源
従来型の観光から新しい視点の観光へ

-観光についてもお聞かせください。まず,茨城県の空の窓口として,開港5年目を迎えた茨城空港について聞かせてください。

 日本では,飛行機をバス代わりに使うという発想にはまだ馴染みがありませんが,世界を見ればLCCはもはや一般的な交通手段として定着しており,これからもさらに市場は拡大していくと考えています。茨城空港は,設計段階からボーディングブリッジを設けず,出発も到着も1階に集約するなど,航空会社の運賃を安くできるLCC対応空港としており,主にアジア圏からの集客を狙った誘致に力を入れていきたいと考えています。
 都心からの距離も80kmと成田空港の65kmと比べても大差ないうえに,搭乗者であれば東京駅まで500円で行ける直行バスを運行するなど利便性の向上を図っているところですが,今後も様々な工夫をしながら,茨城空港の利用促進を図っていきたいと考えています。

 

-LCCが伸びていくと,茨城は強いですよね。では,観光資源や観光振興についてはどうお考えですか。

 茨城県には,日本一の梅の名所「偕楽園」,近世の教育遺産として世界遺産登録を目指す「弘道館」など,さまざまな観光資源があります。
 また,つくばにはJAXA筑波宇宙センターなど,科学技術をはじめ幅広い分野の研究機関などが集積していますので,これらを活用し約50の研究機関をワシントンのスミソニアン博物館のような感覚で周遊できる「つくばサイエンスツアー」なども推進しています。ほかにも,つくばには生活支援ロボット「HAL」などもありますので,2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの際に,茨城県に来てくださった関係者やお客様に見ていただければと考えています。
 さらに,東京に近いという点をいかして,児童・生徒などに農家民泊などをしてもらう体験型教育・研修旅行などにも力を入れています。
 茨城県の観光は,自然,歴史,文化から科学技術まで,幅広い切り口があるので,自然や温泉ばかりという従来型の観光ではない視点でも進めていけたらいいと思います。
 食べ物も観光資源も茨城県には魅力的なものが本当にたくさんありますので,ぜひ,多くの方に茨城にきていただき,魅力を実感していただければと考えています。

 

 

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