住宅の賃貸借契約
住宅の賃貸借契約は、契約自由の原則により、貸主と借主の双方の合意に基づいて行われます。しかし、住宅の賃貸借契約では様々なトラブルが生じており、なかでも退去の際の「原状回復」の費用負担をめぐる相談が多く寄せられています。
春先は、進学や就職、異動などで賃貸住宅への入退去がとりわけ増える時期です。トラブルを未然に防ぐため、住宅の賃貸借契約に関する知識を身につけておきましょう。
トラブル防止のポイント
契約するとき
- 最近は、現地に行かずインターネットだけで情報を集め、契約できる場合もあります。しかし、建物・部屋・設備の状況や周辺環境、交通など生活に必要な情報は、自分の目で確認することが大切です。
- 賃貸借に関するトラブルは、退去する時に多く起きています。トラブル防止のため、入居前からあった傷や汚れ等の情報は貸主と共有し、写真に撮って残しておきましょう。
- 契約前に、貸主側から「重要事項説明書」と「賃貸借契約書」が渡されます。入居期間中にトラブルが起きた場合は、契約に基づいて解決されることになります。契約後に条件の変更を求めても難しいことが多いため、契約する前に内容をよく確認しましょう。疑問点があれば遠慮せずに質問し、希望条件があれば交渉するなどして、十分理解、納得してから契約しましょう。
- 修繕や退去する際の費用負担などについて、借主に著しく過度な負担を求めるなどの特約がある物件は、将来トラブルとなる可能性があります。契約するかどうか、慎重に検討しましょう。
- 契約すると伝えた後にキャンセルを申し出てトラブルになることがあります。契約するかどうか、よく検討したうえで契約しましょう。
入居しているとき
- 雨漏りやトイレの水漏れ等のトラブルが起きたら、すぐに貸主に相談しましょう。借主が貸主に無断で修理を行うと、その内容や金額についてトラブルになることがあるので注意が必要です。
- 借主には、賃貸住宅を適切に管理し使用する注意義務があります。例えば、通常の掃除を怠ったために、特別の清掃が必要なカビが生じてしまったなど、注意義務に反して賃貸住宅に損害を与えた場合には、賠償義務が発生することがあります。
- ペット禁止の物件なのにペットを飼ったなど、契約に違反して使用した場合は、契約を解除されることがあります。契約を守って生活しましょう。
- 賃貸住宅はあくまで借りものです。契約書の内容をよく理解し、日頃からできるだけきれいに使うことを心がけましょう。
退去するとき
- 「原状回復」の費用を借主と貸主のどちらが負担するかをめぐり、トラブルが多く起きています。精算内容をよく確認し、納得できない点は貸主に説明を求めましょう。
- 年月の経過による変化(経年劣化)や普通に使っていてついたキズ等(通常損耗)の修繕については、借主が費用を負担する必要はありません。
- 借主が不注意によって傷や汚れをつけたり、破損させたときは、補修や汚れの除去などに要する費用は借主の負担になります。
- 納得できない費用を請求された場合は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(外部サイトへリンク)を参考に、貸主と話し合いましょう。