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更新日:2024年7月12日
現在、日本各地の砂浜海岸では、河川からの土砂供給の減少や沿岸構造物の建設による影響など様々な要因によって侵食が進み、茨城県も例外ではありません。
県南部の鹿島灘海岸では、砂浜の減少によって生じる越波や護岸の倒壊などの被害を未然に防止するため、全国に先駆けてヘッドランド工法(人工岬)による対策を進めています。
また、県北部の日立市から北茨城市まで至る崖海岸では、長年の風雨や波浪による海食崖が進行し、各地で小崩落や海食洞が確認されているため、それらの対策を進めています。
海岸背後に発達した砂丘では、海岸特有の動植物が生息し、美しい自然環境を残しています。また、浅海域は豊かな漁場であり、鹿島灘のハマグリやシラスは地域の特産物です。
一方、高度経済成長期の鹿島港の開発を契機として産業が発達し、豊かな社会基盤が形成されてきました。さらに近年では、海水浴・サーフィンをはじめとした各種マリンレジャーがますます活況となってきます。しかし、その反面、砂浜が失われた箇所もあり、海岸侵食という問題が生じています。
茨城県では、約70kmにおよぶ鹿島灘の砂浜を守り、その姿を後世へ伝えていくために、全国に先駆けてヘッドランド(人工岬)工法による侵食対策事業を進めてきました。事業開始から30年が経過した現在、ヘッドランドは34基が完成し、侵食の進行を抑制するなど着実に効果をあげています。
▲鹿島灘海岸の位置
鹿島灘では、夏は南から、冬は北からの波浪が卓越する特性があります。それに伴い、海岸の砂の移動も季節的な変動があります。かつては、これらの微妙なバランスと河川(那珂川・利根川)からの土砂供給により、広大な砂浜が保たれていました。
▲かつての鹿島灘海岸
地域の発展を担う沿岸開発により、沿岸漂砂の遮断が生じるようになり、さらに河川からの供給土砂の減少が重なり、侵食問題が顕在化するようになりました。
▲近年の鹿島灘海岸
神栖市波崎から大洗町に至る約70kmの鹿島灘海岸に全40基のヘッドランドを設置し、海浜を安定化する計画です。昭和60年度に建設に着手し、全体的に堤長を伸ばしながら、整備を進め、平成19年度までに33基が完成しています。
また、事業着手時には既に砂浜が消失していたり、狭くなっていた区間では、ヘッドランドのみでの対策が困難なことから、養浜を併用して実施し、砂浜の維持・回復を目指しています。
▲ヘッドランド計画
▼ヘッドランドの整備状況(H25年度末)
海岸名 | 市町 | 計画 | 着工 | 完成 |
大洗海岸 | 大洗町 | 4 | 3 | 3 |
旭海岸 | 鉾田市 | 8 | 8 | 8 |
鉾田海岸 | 鉾田市 | - | - | - |
大洋海岸 | 鉾田市 | 7 | 7 | 7 |
鹿嶋海岸 | 鹿嶋市 | 11 | 11 | 11 |
波崎海岸 | 神栖市 | 5 | 5 | 5 |
計 |
35 | 34 | 34 |
▲鹿嶋海岸(武井釜~角折地区)
▲波崎海岸(矢田部~豊ヶ浜地区)
ヘッドランドの整備により、砂の動きは抑制され、海岸線は安定するようになってきました。しかし、鹿島灘の海岸への自然な土砂の供給はあまり期待できない状況にあり、砂浜の回復に向けてはヘッドランドのみでは限界があります。このため、積極的な砂浜を維持・回復する工法として「粗粒材養浜工」をヘッドランドと併せて実施しています。
また、海岸では侵食が進んだ一方で、港の近くでは砂が過剰に堆積しており、航路の維持などにおいて問題になっています。養浜実施に当たっては、これら余剰土砂を養浜材料として有効活用しています。今後も、沿岸域の広範囲かつ総合的な土砂管理に基づく、効率的な養浜工を実施し、これまで侵食された砂浜の回復に努めるとともに、今後予測される侵食に対し備えていきます。
▲養浜の効果
鹿島港北側約2kmに位置する明石~神向寺地区(ヘッドランドNo.6~7間)の海岸では、侵食状況が激しかったため、ヘッドランド建設以前に砂浜が消失してしまいました。その後、ヘッドランドを整備して海岸侵食は治まりましたが、砂浜がないため越波や塩害に対する後背地の危険が残りました。そこで、確実かつ早急に砂浜っを回復することができる粗粒材(現地の砂よりも粒の大きい小石)養浜を平成17年度から始めました。現地の海岸では、確実に砂浜が広がる効果が見られています。
▲鹿嶋市神向寺地区の位置と被害状況
2002年9月8日(実施前) |
2007年1月23日(実施後)
|
2005年(実施前) |
2008年4月(実施後) |
▲粗粒材養浜実施結果
・鹿島灘海岸ヘッドランド事業パンフレット(PDF:5,181KB)(別ウインドウで開きます。)
・ヘッドランド周辺における水難事故について (別ウィンドウで開きます。)
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