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更新日:2024年2月29日
提案説明に先立ちまして、一言申し上げます。
この度、私の健康上の理由により、県民の皆様並びに議員各位にご心配とご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。本日から登庁し、引き続き、県政の推進に全力で取り組んでまいりますので、何とぞご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
令和6年第1回県議会定例会の開会に当たり、提出いたしました議案等の説明に先立ち、県政運営に関する所信の一端を申し上げます。
はじめに、元日に発生した令和6年能登半島地震により亡くなられた方々のご冥福を謹んでお祈り申し上げますとともに、被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。市町村、関係機関などと連携し、オール茨城として800名を超える応援職員を派遣しておりますが、被災地の一日も早い復旧・復興と、被災された皆様が平穏な生活を取り戻されることを心から願っております。
さて、最近の世界情勢を見てみますと、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢、グローバル・サウスと呼ばれる国々の台頭など、米国が圧倒的なリーダーシップで国際秩序をコントロールしていた時代はもはや終焉を迎え、国際社会のパワーバランスが大きく変わろうとしています。米国大統領選をはじめ、今年、多くの国々で行われる選挙の結果は、世界の混迷に拍車をかけるのではないかとも危惧されております。
また、「地球沸騰化時代」と言われるほどの気候変動は、世界各地に耐え難い猛暑や豪雨などの自然災害の脅威をもたらしました。加えて、農作物の品質低下や海水温の上昇による漁場の変化、屋外での労働生産性の低下など広範な影響が顕著となっており、その深刻さは増大の一途をたどっております。
科学技術の分野では、生成AIが驚異的な進歩を遂げ、身近な社会での活用も急速に進み、AIを活用した作品が「芥川賞」を受賞しました。文書作成やデータ解析をはじめ、業務の効率化など、私たちに様々な恩恵をもたらしつつも、進化のスピードはとどまる気配を見せず、近い将来、人間の知能を超える可能性や、そのリスクも指摘されております。
我が国におきましては、バブル経済崩壊後の「失われた30年」と呼ばれる経済社会の長い停滞の末に、名目GDPはドイツに抜かれ、世界第4位に転落しました。
足元では、株価が34年ぶりに史上最高値を更新するとともに、昨年に引き続き、本年も高水準の賃上げが期待できるなど、経済の好循環の実現に向けた転機を迎えておりますが、賃金上昇を上回る物価高騰は、私たちの生活に重くのしかかっております。
こうした中、私たちが直視しなければならない最も重要な課題は、あまりにも急激な人口減少であります。5 0年前に200万人以上あった日本人の出生数は、2023年には70万人台前半まで減少する見込みであり、我が国はまさに長く急な坂道を転げ落ちようとしていると言っても過言ではありません。さらに、この少子化は高齢化の進行と相まって、経済活動の中心となる生産年齢人口が急減しているのであります。現在、物流、建設業界などの「2024年問題」が目の前に迫り、様々な場面で人手不足の影響が顕在化しつつありますが、更に深刻な事態への備えが待ったなしの状況にあります。
私たちは、今、過去には後戻りできない変化を目の当たりにし、将来、振り返れば、大きな時代の転換点として歴史に刻まれるであろう未曽有の激動の時代の入り口に立っているのであります。
そして今後、私たちが進むべき道は何か。ある報道機関が大学などと共同し、出生率や賃金の推移など過去数十年にわたる膨大なデータを基にAIを活用した分析を行ったところ、働き方改革やイノベーションへの取組など私たちの具体的な行動や選択次第で、たどり着く未来は大きく異なるという結果が示されたそうです。未来が希望に満ちた社会になるのか、それとも、夢見ることも叶わぬような閉塞した社会になるのかは、私たちが変化を恐れずに、選び取る、その一歩にかかっているのであります。
私たちは、今こそ、現状を打破し、果敢に挑戦し、本県の輝かしい未来を掴み取ろうではありませんか。
私は、知事就任以来、すべては来るべき激動の時代を見据え、その荒波を乗り越えるため、「挑戦」「スピード感」「選択と集中」の3つの基本姿勢のもと、先手先手で、困難な課題にも躊躇することなく果敢に挑戦してまいりました。
その結果、2021年度県民経済計算の推計結果では、本県の名目経済成長率は全国の2.7パーセントを3.0ポイント上回る5.7パーセント、実質経済成長率は全国の2.8パーセントを3.8ポイント上回る6.6パーセントとなるとともに、1人当たり県民所得は前年度と比べ、1人当たり国民所得の伸びを3.8ポイント上回る9.6パーセントの増となり、県内総生産及び1人当たり県民所得ともに過去最高額に達するなど、これまでの私たちの挑戦が成果に結びついたものと考えております。
これまでの取組としましては、企業誘致では、工業団地の分譲価格の大胆な見直しなどにより、知事就任後の5年間で過去30年分相当の面積を分譲するとともに、特に力を入れて取り組んできた成長産業の本社機能移転については、全国トップレベルの補助制度の創設などにより、これまでに累計で26件の本社機能の移転計画を認定し、約3,800人の雇用創出に結びつけました。さらに、約20年ぶりとなる県施行の工業団地「圏央道インターパークつくばみらい」の開発を進め、事業化からわずか2年4か月という短期間で全区画を分譲したことなどにより、県外企業立地件数が6年連続で全国第1位となるなど、全国に誇り得る成果を上げております。
また、需要が高まっていたかんしょの生産を振興することで、生産農家の所得を向上させるとともに、荒廃農地の再生面積は全国第1位となりました。さらには、気候変動に伴う本県沿岸の海水温上昇により増加したイセエビを、「常陸国」の名を冠した新たなブランド「常陸乃国いせ海老」として打ち出すとともに、レンコンの食害が課題となっていたマガモを「常陸国天然まがも」としてブランド化したことにより、鳥獣被害対策と特産品開発とを両立するなど、私は状況の変化をつぶさに捉え、大胆な取組を素早く実行することで、本県の課題を強みへと転換してまいりました。
加えて、市場ニーズを踏まえた戦略的な営業活動と海外での積極的なトップセールスにより、農産物の輸出額が10倍に増加するとともに、トップブランド化の取組によりメロンの「イバラキング」や梨の「恵水」は1玉1万円を超える価格での販売が実現いたしました。
少子化対策では、AIを活用したマッチングシステムの導入により、2年間でお見合い実施件数、交際開始に至ったカップル数とも約3倍に増加いたしました。次世代を担う「人財」育成では、全国初のIT専科高校である「IT未来高校」と「つくばサイエンス高校」を開校するなど、社会の変化やニーズに対応した魅力と特色ある学校づくりが進展しております。安心して暮らせる社会づくりでは、通報用スマートフォンアプリの導入などにより、不法投棄件数が2年間で約6割減少いたしました。
さらに、「茨城デスティネーションキャンペーン」では、創意工夫を凝らした体験企画や地域イベントに国内外から500万人を超える方々に参加いただき、在京テレビ局など各種メディアで300件以上取り上げられるなど、本県観光の新たな魅力と価値の創出により、今後の観光地域づくりに大きなインパクトをもたらしました。
本県は、過去の延長線上にはない、新たな一歩を踏み出し、「新しい茨城」づくりに向けた、確かな「変化」が生まれ、輝かしい未来への歩みを進めているものと実感しております。
こうした本県の「変化」を軌道に乗せ、加速度的に進む人口減少などに伴う危機を乗り越えるためには、県民一人ひとりの「生産性」が高く、様々な困難にも耐え得る、豊かで経済力がある社会の構築、そして、安心して暮らせる社会基盤の確保が必要不可欠であります。
本県の「生産性」を更に向上させるため、高収益な産業構造への転換を目指し、適切な価格転嫁と賃上げの両立により、経済が好循環する環境づくりを進めるとともに、利益率の高い職場を創出するための戦略的な企業誘致や、差別化・高付加価値化による「儲かる農業」の実現に取り組んでまいります。こうした取組を加速するためには、海外の力を本県に取り込むことが不可欠であることから、県産品の海外展開やインバウンド誘客などを一層促進してまいります。
人口減少社会においては、一人ひとりの「人財」の活躍が極めて重要であります。
このため、多様な才能を伸ばす魅力ある教育への改革やリスキリングの推進など、本県の発展の礎となる人材の育成に注力するとともに、ダイバーシティの推進により、多様で有能な人材の活躍を促進してまいります。
なかでも、深刻な人手不足が社会問題となりつつある中で、本県産業を支える優秀な外国人材の確保は喫緊の課題であることから、外国人材を惹きつけ、世界から選ばれる県を目指し、人材の確保・育成から生活・教育環境の整備に至るまで、あらゆる対策を強力に推進してまいります。
さらに、観光振興をはじめ、経済・人的交流の促進などを通じ、国内外からの交流人口・関係人口を拡大するための取組を進めてまいります。特に、本県の豊かな食材をいかんなく活用して、魅力ある新たな「食」の観光資源を創出し「食」を通した観光産業の底上げに取り組んでまいります。
加えて、茨城県植物園のリニューアルをはじめ、民間活力を活かしたより効率的・効果的な資産運営に取り組み、収益を生み出す資産への転換を進めてまいります。
一方、「安心して暮らせる社会基盤」の確保に向けては、頻発化・激甚化する自然災害からの逃げ遅れによる人的被害ゼロを目指した訓練の実施や、県土の防災・減災対策など、ソフトとハードの両面から災害・危機に強い県づくりを進めてまいります。
また、地域保健・医療提供体制の充実に加え、障害のある人も暮らしやすい社会を目指し、医療費助成の拡充を図るなど、県民の命を守り、安心安全につながる生活基盤の充実にしっかりと取り組んでまいります。
今後とも、「挑戦」「スピード感」「選択と集中」の3つの基本姿勢を徹底し、本県が将来にわたり発展し続けるよう、県民一人ひとりが変化を恐れず、自信をもって挑戦できる「新しい茨城」づくりに全力で取り組んでまいります。
今回提案する令和6年度当初予算は、加速度的に進む人口減少などに伴う様々な困難を乗り越えられる「新しい茨城」づくりに挑戦するための予算であります。
これまでの取組で生まれた、過去の延長線上にはない本県の確かな「変化」を軌道に乗せ、その成果を更に引き上げていくため、「新しい豊かさ」、「新しい安心安全」、「新しい人財育成」、「新しい夢・希望」の4つのチャレンジを、さらに加速するための施策を推進できるよう、取りまとめたものであります。
一般会計予算の総額は、1兆2,511億90百万円であり、令和5年度当初予算と比較して3.2パーセント、410億4百万円の減、新型コロナウイルス感染症に係る対策額を除いた比較では、3.0パーセント、345億72百万円の増となっております。
歳入につきましては、定額減税に伴う個人県民税の減などにより、県税収入を88億円減、4, 18 0億円と見込むとともに、地方財政計画を踏まえ、普通交付税を2億円増の1,947億円、臨時財政対策債を93億円減の71億円と見込んでおります。
この結果、実質的な一般財源の総額につきましては、0.6パーセント、43億円減となる7,414億円を計上いたしました。
一方、歳出につきましては、一般行政費が、新型コロナウイルス感染症対策経費の減により、9.0パーセント、418億円減の4,246億円となっております。公共事業費は、企業会計を含む公共事業全体で、1 . 1パーセント、12億円増の1,101億円となっております。
特別会計は13件で、総額4,965億47百万円、8.3パーセントの増、企業会計は6件で、総額1,358億円、17.1パーセントの減となっております。
次に、令和6年度の主な施策について申し上げます。
第1は、新しい豊かさについてであります。
まず、質の高い雇用の創出等についてであります。
若者が望む質の高い雇用をできる限り多く創出できるよう、半導体や次世代自動車、宇宙関連などの成長分野をターゲットに、戦略的な企業誘致を展開してまいります。
全国トップレベルの補助制度を活用した誘致活動では、「水」を燃料とする小型人工衛星向け推進機を研究開発する東京大学発の宇宙関連ベンチャー企業である株式会社Pale Blueの本社機能の移転計画を認定したところであり、引き続き、本社機能の誘致を進めてまいります。
また、県施行の工業団地「フロンティアパーク坂東」や、先端産業などから確実性の高い立地ニーズのある常陸那珂工業団地の拡張地区について、スピード感をもって整備を進めていくほか、「未来産業基盤強化プロジェクト」により市町村の開発計画を支援し、企業の立地ニーズに応じた産業用地を確保することで、1社でも多くの優良企業の立地を実現してまいります。
高度デジタル人材を育成し社会に輩出することを目的に大学校への移行を進めている県立産業技術短期大学校、IT短大について、2026年4月の「(仮称)情報テクノロジー大学校」としての開校を目指し、新棟の建設工事に着手してまいります。
さらに、成長産業や成長分野で必要とされるスキルを習得するリスキリングについて、産学官で構成する「茨城県リスキリング推進協議会」のもと、デジタルスキルの習得支援や先進的な企業の顕彰などの各種施策を進めるなど、本県産業の生産性の向上や賃金の上昇を目指し、県を挙げて取り組んでまいります。
次に、新産業育成と中小企業等の成長についてであります。
カーボンニュートラルにつきましては、昨年12月、クリーンエネルギーのサプライチェーン構築に向けた、民間主導による水素の利活用に関する実行可能性調査に対し、支援を決定いたしました。また、広域的なアンモニアサプライチェーンの構築に向け、国が重点的な支援を行うカーボンニュートラル燃料拠点に採択されるよう、企業間の一層の連携を後押ししているところであり、引き続き、各種支援策の効果的な活用などにより、本県の将来を担う産業の創出を図ってまいります。
ベンチャー企業の成長を加速させ、そのイノベーションを通じて本県産業が共に成長する環境の構築を目指し、本日、県経営者協会と連携し「ベンチャーフレンドリー宣言」を行ったところであり、ベンチャー企業の優れたサービスや製品について、産業界へのマッチングや公共調達などを進めてまいります。
次に、強い農林水産業についてであります。
本県農林水産業の持続的な発展を図るため、「茨城農業の将来ビジョン」に基づき、意欲ある担い手が牽引し、収益性の高い農業への構造改革を加速してまいります。
農業の構造改革に向けては、収益性の高い品目への積極的な転換、輸出による販路拡大のほか、農地の集積・集約化による規模拡大を図るとともに、企業の農業参入などを推進してまいります。
また、付加価値の高い有機農産物の供給能力や競争力の向上を図るため、荒廃農地などを活用した生産量の確保に加え、高級果実専門店などから高い需要が見込まれるイチゴなど新品目の栽培や加工品開発、販路開拓などを支援してまいります。
さらに、肥料価格の高騰などによる農家負担の軽減と規模拡大を通じた所得向上を後押しするため、良質な堆肥を生産する畜産農家と堆肥を利用する耕種農家の連携による資源循環型の農業団地の形成を支援してまいります。
林業につきましては、引き続き、森林湖沼環境税を活用し、規模拡大に意欲的な経営体を支援するほか、大規模建築物や木造ビルなどへの県産木材の利用促進による需要拡大を図ってまいります。
次に、農林水産物のブランド力強化についてであります。
昨年誕生した新ブランド「常陸牛 煌」につきましては、首都圏への供給拡大などに取り組むほか、豚肉の「常陸の輝き」について、話題性のある取組によりブランド価値を効果的にPRしてまいります。また、客観的な品質基準による認定などトップブランド化の取組を進めている干し芋について、引き続き、認知度向上を図り、他の追随を許さない産地づくりを進めてまいります。
ハナモモをはじめとする枝物につきましては、産出額が全国第1位となっておりますが、国内外で需要が拡大しているため、荒廃農地を活用した更なる生産拡大に取り組むなど、トップランナーとしての地位を確立するとともに、生産量全国第1位の栗については、儲かる栗産地への構造改革を図るため、新たに笠間栗ファクトリー株式会社へ出資することにより、産地での加工・販売を後押しし、高付加価値化によるブランドの確立を目指してまいります。
また、「常陸乃国いせ海老」の販路拡大を図るとともに、県独自の厳格な鮮度基準による高品質なシラスのブランド発表などを通じ、トップブランド化に取り組むほか、流通試験を実施した養殖マサバについて、商業化に向けた取組を進めてまいります。
次に、ビジット茨城についてであります。
一昨年、昨年に続き、本年10月から「アフターデスティネーションキャンペーン」を実施いたします。これまでに生み出された観光コンテンツについて、JRや地域と一体となり、定着化や収益力の強化に向けた更なる磨き上げを図りながら、集中的なプロモーションを展開し、国内外からの持続的な観光誘客につなげてまいります。
また、国内外の富裕層などをターゲットとした「稼げる観光地域づくり」を推進するため、世界的アート集団「チームラボ」による常設展を誘致し、来る8月、北茨城市に開業が予定されているほか、観光地における拠点整備やブランディングなどに取り組んでいるところであります。引き続き、本県観光のフラッグシップとなる宿泊・観光施設の誘致に取り組むほか、地域における観光資源の高付加価値化に向けた取組を支援してまいります。
茨城県植物園につきましては、「緑に遊び、緑に包まれて眠る、日本初の泊まれる体験型植物園」を基本コンセプトに、自然を感じ、植物に親しみながら、子どもから大人まで楽しめる日本で唯一の「泊まれる植物園」として、2025年4月のリニューアルオープンを目指し、施設の整備などに取り組んでまいります。
次に、「食」の魅力による観光創出についてであります。
魅力ある新たな「食」の観光資源を創出し、地域振興の起爆剤とするため、本年10月、「シン・いばらきメシ総選挙2024」を開催し、市町村から地元を代表する選りすぐりの新たなご当地グルメの出店を募り、来場者の投票などにより、本県を代表するNo.1のご当地グルメを決定いたします。グランプリグルメについては、県内外に広く認知されるようメディアの活用などにより集中的なプロモーションを展開し、本県を代表する新たなご当地グルメを創出いたします。
また、11月には「食の宝庫 体験王国『常陸国いばらき』丸ごと出張所」をコンセプトに、本県農産物や県内市町村のご当地グルメに加え、「シン・いばらきメシ総選挙2024」のグランプリグルメなどが一堂に味わえる「茨城をたべよう収穫祭」を都内で開催し、本県の「食」の魅力を強力に発信してまいります。
次に、循環型社会の形成についてであります。
廃棄物の適正な処理につきましては、産業廃棄物の不法投棄や不適正な残土搬入事案などの撲滅に向け、引き続き、決して「捨て得」は許さない厳格な対応を図るとともに、先の定例会において議決いただいた「茨城県再生資源物の屋外保管の適正化に関する条例」を本年4月1日から施行し、金属スクラップなどの再生資源物の適正な保管・管理を図るなど、生活環境の保全と安全の確保に万全を期してまいります。
新たな産業廃棄物最終処分場の整備につきましては、事業主体である一般財団法人茨城県環境保全事業団において実施設計を行い、本年3月末を目途に建設工事に着手する予定となっております。引き続き、施設の安全性の確保を最優先とし、地域との調和に配慮しながら、2026年度末の供用開始を目指し、整備を進めてまいります。
第2は、新しい安心安全についてであります。
まず、県民の命を守る地域保健・医療についてであります。
地域医療につきましては、2024年度を初年度とする「第8次茨城県保健医療計画」に基づき、医師確保や医療提供体制の整備を進めてまいります。
医師確保につきましては、救急や小児・周産期などの政策医療を担う地域の中核病院の医療機能を強化するため、必要な医師の確保に重点的に取り組むとともに、全国トップクラスとなる11大学、70名に増員した地域枠などによる医師の養成・定着を推進し、地域及び診療科の偏在解消に取り組んでまいります。
また、医療提供体制につきましては、更なる人口減少・少子高齢化を見据え、医療資源を有効に活用するため、高度医療に係る機能の集約化や役割分担の明確化などをより一層推進してまいります。
さらに、感染症対策や大規模災害時の健康危機管理の中核を担う保健所について、庁舎の老朽化対策と機能強化を図るため、土浦保健所の建設工事に着手するとともに、古河、潮来、竜ケ崎及びつくば保健所の移転や建て替えに向け、基本設計を実施してまいります。
次に、障害のある人も暮らしやすい社会についてであります。
重度の身体障害者・知的障害者・精神障害者の方を対象にした医療費助成制度、いわゆるマル福制度につきましては、知事就任後の2019年4月から、精神障害者保健福祉手帳1級保持者を対象に加え、制度を拡充いたしましたが、精神障害者の方々の収入面での課題は大きく、関係団体の皆様からもその改善についてご要望をいただいているところであります。
このため、新たに本年4月1日から、マル福制度の認定要件に精神障害者保健福祉手帳2級を保持し、かつ、中度の身体障害者手帳又は療育手帳を保持する、いわゆる重複保持者を加えることとし、健康の保持と経済的負担の軽減を図ることにより、障害のある方も地域で安心して暮らすことができる社会を目指してまいります。
あすなろの郷の再編整備につきましては、2025年度の供用開始に向け、県立のセーフティネット棟の建設工事を進めるとともに、県と民間事業者の役割分担と連携強化のもと、入所者の円滑な移行に向けた準備を進めてまいります。
次に、安心して暮らせる社会についてであります。
急激な人口減少や少子高齢化が進展する中、高齢者などの暮らしを支える交通インフラを維持確保するため、市町村やNPOなどによる乗り合いタクシーの運行やAIなどのデジタル技術の導入など、新たな移動サービスの取組を支援するとともに、国におけるライドシェアの議論を注視しながら、持続可能な公共交通ネットワークの構築に取り組んでまいります。
一方、県総合計画における「いばらき幸福度指標」向上のためには、低迷する「新しい安心安全」への対応が急務であり、特に、犯罪率が全国的にも高位で推移する自動車盗などの抑止が喫緊の課題となっております。このため、盗難自動車のナンバーを読み取る緊急配備支援システムについて、2025年度までの増設計画を1年前倒しし、設置を加速してまいります。
また、老朽化した警察署について、県民の利便性向上と警察活動の拠点としての機能向上を図るため、2026年度の供用に向け、古河警察署の建設工事を進めるとともに、新たに2028年度の供用を目指し、石岡警察署の基本設計を実施してまいります。
次に、災害・危機に強い県づくりについてであります。
この度の令和6年能登半島地震をはじめ、過去の災害を教訓とし、想定を超える災害はいつでも起こりうることを念頭に、近年頻発化・激甚化する風水害や大規模地震などに対し、先手先手の防災・減災対策を進め、災害への対応能力の向上を図ってまいります。
今年度から開始した、洪水ハザード内の全ての住民の方を対象とした訓練につきましては、市町村との緊密な連携のもと、来年度は実施時期を前倒しし、本格的な台風シーズンの到来前までに行うことといたしました。併せて、マイ・タイムライン作成の啓発や、避難行動要支援者の搬送訓練なども含めたより効果的な訓練とすることにより、発災時の適切な避難行動につなげてまいります。
また、国の交付金を活用し、原子力災害を含めた災害時の避難関連情報の効果的な伝達手法について、有用性の実証などに取り組んでまいります。
一方、昨年の豪雨災害により被災した河川や道路については、早期の本格復旧に向け全力で取り組むとともに、県北地域の中小河川をはじめとした流域治水に、計画的かつ集中的に取り組んでまいります。また、木造住宅の耐震改修などに係る補助制度の周知徹底を図るほか、公共施設の耐震化や緊急輸送道路の整備など、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の予算を活用しながら、防災・減災対策をより一層加速してまいります。
第3は、新しい「人財」育成についてであります。
まず、魅力ある教育環境と学び・文化などを楽しむ茨城についてであります。
デジタル技術を活用し、質の高い学びの機会を提供するため、昨年12月から県立の中高一貫教育校において、優れた指導力を持つ教員などによるオンライン授業を試行的に導入したところであり、来年度から、本格的に導入してまいります。
子どもたちが自ら考え、行動し、未来を切り拓く力を育むためには、学校外にも目を向け、体験的・探究的な活動を通して学ぶ時間も重要であります。このため、来年度から、年間最大5日間、児童生徒が登校しなくても欠席とならない制度として「ラーケーション」を導入し、平日に保護者などと活動できる機会を確保してまいります。
本県の歴史文化に触れる場として多くの県民に親しまれている茨城県立歴史館について、インバウンドを含めより多くの方々に来館いただけるよう、民間のアイディアを活用した歴史的・文化的ストーリー性の高い展示や出版社と連携したプロモーションなどにより、魅力向上に取り組んでまいります。
次に、日本一、子どもを産み育てやすい県についてであります。
「次元の異なる少子化対策」の実現に向け、昨年12月に策定された国の「こども未来戦略」に基づき、児童手当の所得制限撤廃などによる制度の拡充のほか、妊娠時から出産・子育て期までの伴走型相談支援と経済的支援の一体的な実施、保育士の処遇改善や放課後児童クラブの常勤職員配置の促進など、市町村と連携し、ライフステージに応じた切れ目のない支援を行ってまいります。
また、児童虐待対策につきましては、増加する虐待事案に迅速かつ的確に対応するため、引き続き児童相談所の体制を強化するほか、地域の子育て家庭からの相談に応じ、心理療法による心のケアなど専門的支援を行う民間の「児童家庭支援センター」を新たに1か所設置し、虐待防止対策を充実させてまいります。
加えて、子どもの権利擁護の強化を図るため、児童養護施設への入所などの場面において、関係者から独立的な立場にある「意見表明支援員」が子どもの悩みや不安を聴き取り、代弁して、各種支援策に反映する仕組みを構築することにより、子どもの心身の健やかな成長につなげてまいります。
次に、外国人材の確保・育成についてであります。
本県ではこれまで、急激な人口減少による人手不足を見据え、他県に先駆け、外国人材支援センターの設置やベトナムをはじめとする海外の地方政府などとの関係強化を進め、即戦力となる高度外国人材の獲得や活躍促進に取り組んできたところであり、今後、取組を加速してまいります。
まず、高度人材の更なる獲得に向け、新たにインドの教育機関と連携し、日本語講座の運営や県内企業への就職を支援するほか、外国人留学生の県内就職を促進するため、大学や県内企業とコンソーシアムを構築し、留学生向けの企業視察ツアーやインターンシップなどを共同で実施してまいります。
また、昨年7月に人材育成プログラムの共同開発など相互協力に関する共同声明を発出したベトナムのロンアン省と連携し、新たに製造業における人材育成プログラムを開発し、本県への定着を見据えた外国人材の育成を図ってまいります。
介護人材の確保につきましては、外国人留学生に日本語学校の学費や生活費などの奨学金を貸与する介護施設などを支援し、安心して学習・就労ができる環境を整備してまいります。また、県内での就労を希望する外国人と介護施設などとのマッチング支援のほか、新たにインドの日本語学校から、県内の介護福祉士養成校への修学ルートを開拓してまいります。
次に、外国人材に選ばれる県づくりに向けた生活・教育環境の整備についてであります。
本県に暮らす外国人に対する母語による相談・支援体制を強化するため、先月17日、外国人コミュニティで活躍する20名の方々を、生活の困りごと相談や情報提供などを担う「IBARAKIネイティブコミュニケーションサポーター」として認定したところであり、引き続き、外国人の方々が安心して暮らせる生活環境の整備を進めてまいります。
外国人児童生徒が増加する中、日本語が話せなくても安心して学ぶことができる教育環境を整備するため、来年度から小中学校のモデル校において、日本人教員及び外国語が話せる支援員を配置するほか、県内のブラジル人学校に在籍する児童生徒に対し、日本語の訪問指導や小中学校の児童生徒との定期的な交流を図ってまいります。
また、新たに県立高等学校5校においてきめ細かな日本語指導やキャリア支援を行うとともに、外国人生徒の県内企業への就職を後押しするなど、地域の担い手として共生するための支援体制を充実してまいります。
一方、高度外国人材などの定着や外資系企業の誘致を促進するため、県がつくば市に誘致したインターナショナルスクールにつきましては、本年夏頃に開校する予定であり、引き続き、多様で魅力ある教育の場の確保に取り組んでまいります。
さらに、外国人にとっての働きやすさ・住みやすさ・教育環境の充実を図るため、外国人版の「幸福度指標」を策定し、本県の強みや課題を明確にしながら、各種施策の検討に活用してまいります。
次に、自分らしく輝ける社会についてであります。
一人ひとりが尊重され、誰もが個々の能力を発揮できる、いわゆるダイバーシティ社会の実現を図るため、ダイバーシティ推進センターにおいて、企業などのダイバーシティへの取組状況を「見える化」するための県独自の指標を活用し、県内企業へのコンサルティングを実施するとともに、ダイバーシティへの理解を深めるWebゲームを制作するなど、引き続き、県民への意識啓発や県内企業の取組を促進することにより、多様性を認め合い、誰もが活躍できる社会の実現に取り組んでまいります。
第4は、新しい夢・希望についてであります。
まず、世界に飛躍する茨城についてであります。
本県経済の発展のため、縮む国内市場を頼りとする状況を打破し、新たな市場を海外に求め、成長する海外の力を本県に取り込み、本県のグローバル化を強力に推し進めてまいります。
今月8日から13日にかけて、イタリア共和国の友好提携都市エミリア・ロマーニャ州を、県内事業者や関係団体などとともに訪問し、私自ら、現地のマスコミに対し、加工食品や日本酒などの県産品の販路開拓や観光誘客に向けたプロモーションを実施するとともに、宇宙産業の研究・技術交流や、文化交流について意見交換を実施してまいりました。引き続き、継続的なパートナーシップの構築を通じ、経済・人的交流を促進してまいります。
また、本県の強みであり、競争力ある製品や高い技術力を有する「ものづくり企業」の海外展開につきましては、新たに、海外で実施される展示会への出展支援や専門家による伴走支援などを実施することにより、海外への一歩を踏み出す企業の挑戦を強力に後押しし、企業の稼ぐ力の強化につなげてまいります。
世界に挑戦するベンチャー企業の創出につきましては、米国の支援機関と連携し、海外投資家などに向けたプレゼンテーションの機会を提供するなど、引き続き、海外投資の呼び込みなどを支援してまいります。
県産品の海外展開につきましては、市場ニーズや需要の動向を的確に捉えたスピード感のある戦略的な営業活動に取り組むとともに、海外でのトップセールスを行うなど、新たな市場を獲得してまいります。
国際観光・インバウンドにつきましては、ゴルフやサイクリングなど本県の強みを活かし、台湾・韓国を中心に、国や地域のニーズを踏まえた戦略的な誘客プロモーションを展開するとともに、新たに、ナイトタイムエコノミーの活性化を目指した滞在型の観光コンテンツの造成に取り組むなど、インバウンド誘客を加速してまいります。
茨城空港におきましては、来る4月2日から約4か月間、タイガーエア台湾が、昨年に続き、台湾南部の高雄を結ぶチャーター便を運航する予定となっており、また、茨城港では、来年度、過去最多となる6隻の外国クルーズ船が寄港する予定となっております。引き続き、航空路線の拡充や外国クルーズ船の誘致に精力的に取り組み、インバウンド需要の更なる取り込みと交流人口の拡大につなげてまいります。
次に、魅力発信No.1プロジェクトについてであります。
本県の魅力発信の強化を図るため、常に話題性のある取組を提供するなど各種メディアでの露出拡大に努めた結果、昨年度の本県情報のメディア掲載による広告換算額は160億円と過去最高額を更新いたしました。引き続き、本県の魅力を更に広く発信するため、新たな観光資源やトップブランド化が進む農林水産物の更なる話題性の向上を目指すなど、戦略的なパブリシティ活動を進めてまいります。
また、アンテナショップ「イバラキセンス」における訴求力のあるイベントの実施や拡散力の高いSNSでの動画配信、AIなど先進技術を取り入れたVtuber茨ひよりの活用などにより、本県の魅力を国内外にしっかりとPRしてまいります。
次に、活力を生むインフラと住み続けたくなるまちについてであります。
つくばエクスプレスのJR土浦駅への延伸につきましては、採算性の確保など乗り越えなければならない大きな課題があることから、現在、必要な調査・検討を進めているところであり、まずは、関係機関との協議のベースとなる延伸計画の素案の策定を進めてまいります。
広域交通ネットワークの中核となる県内の高速道路につきましては、東関道水戸線の未開通区間である潮来インターチェンジから鉾田インターチェンジ間において、2025年度から2026年度の全線開通に向けた整備が進められております。また、圏央道の4車線化につきましては、昨年3月に境古河インターチェンジから坂東インターチェンジ間が開通し、2026年度までの全線開通に向けて整備が進められております。引き続き、国などに対し、整備推進を強く働きかけ、県内高速道路ネットワークの充実と利便性向上を図ってまいります。
港湾事業につきましては、茨城の港の優位性をPRしながら、積極的な航路誘致に取り組んだ結果、茨城港常陸那珂港区において、新たに中国の上海及び太倉とを結ぶ外航定期コンテナ航路が開設され、今月2日に初寄港いたしました。引き続き、コンテナ貨物の集荷を促進し、航路の拡充に取り組むとともに、岸壁や防波堤の整備を進めるなど、港湾の機能強化を進めてまいります。
茨城空港の更なる利活用を促進するため、昨年10月からの「1時間当たり1着陸」との民航機の着陸ルールの弾力化を踏まえ、関係機関や事業者などの意見を聞きつつ、ハード面やビジネスジェットの活用など様々な観点から、将来のあるべき姿について検討してまいります。
次に、県北地域の振興についてであります。
県北地域においては、中小企業による付加価値の高いビジネスの創出や、地域おこし協力隊として呼び込んだ人材による新たなビジネスへの挑戦など、引き続き、意欲ある方々の取組を集中的に支援し、主体的な地域づくりを進めてまいります。
また、「常陸国ロングトレイル」につきましては、ヨルダントレイル協会とのパートナーシップ協定を契機とし、インバウンド向けモニターツアーやガイドの育成などによりブランド価値を高め、国内外からの誘客を促進してまいります。併せて、人気ゲームなどとの連携企画により、作品ファンのファミリー層や若年層の誘客を促進する取組を新たに実施いたします。
さらに、水郡線につきましては、本年が全線開通90周年の節目の年となることから、地域一丸となった利用促進と沿線地域の新たな魅力の発信を目的に、沿線市町や事業者と連携し「水郡線90周年大感謝祭」として各種企画を実施してまいります。
引き続き、今後改定を行う県北振興チャレンジプランのもと、県北地域が県全体の発展を牽引する「活力があり、持続可能な地域」となることを目指してまいります。
次に、組織の再編についてであります。
農産物・食品の販路拡大や観光誘客の一層の促進に向けて、国内・国外を問わず、一体的・戦略的な営業活動を展開するため、マーケティングとセールスにそれぞれ特化した組織体制を整備いたします。
また、外国人介護人材の確保などの諸課題に迅速かつ的確に対応するため、福祉人材・指導課を設置いたします。
次に、条例その他について申し上げます。
条例は、新たに制定するもの2件、改正するもの46件、廃止するもの1件、合わせて49件であります。
新たに制定する条例は、「茨城県地域医療薬剤師修学資金貸与条例」などであり、一部改正を行うものは、「茨城県職員定数条例の一部を改正する条例」などであります。
条例以外の議案といたしましては3件で、「包括外部監査契約の締結について」などであります。
以上で、説明を終わりますが、なお詳細につきましては、議案書などによりご審議の上、適切なご議決を賜りますようお願い申し上げます。
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