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第5回(第12回世界湖沼会議:インド、2007年)受賞論文一覧
No.1
- 氏名:
Prof. Ali Berktay
Assist Prof. Dr Bilgehan Nas
Dr. Hakan Karabork
Dr. Semih Ekercin
- 国籍:
トルコ
- 題名:
GIS、地理統計、及びリモートセンシング適用によるBEYSHEHIA湖(トルコ)における水質評価
- 論文要旨:
Beyshehir湖は中央アナトニアにとって最も重要な飲料水及び灌漑水の源である。湖は平均水深5m、ほぼ656km2の面積を有している。本研究の目的は、(1)トルコBeyshehir湖の現在の水質の概況を提供すること、(2)GIS、地理統計やリモートセンシングを用いて、湖表面における水質パラメータの空間的な分布を調べることである。
水試料は40地点から集めた。物理的、化学的パラメータ(pH、溶存酸素、透明度、濁度、電導度、TSS、アルカリ度、COD,BOD,TN,TP,NO3,HN4)とクロロフィルa値は2005年8月19日に同湖で測定した。クロロフィルaに基づくと、同湖は中栄養、TPと透明度では富栄養になると思われる。
水質測定データの解析には、GISソフトパッケージArc GIS 9.0とArc GIS地理統計分析が用いた。「正規クリジング」と呼ばれる内挿法は、全湖の水質パラメータの空間的分布を調べるために使用した。TN、TP、透明度及びクロロフィルaについて湖表面の空間的な分布地図を作成した。Aster衛星画像は同時に行われた現地測定に加え、水質マッピング用のリモートセンシングデータとして使った。Aster衛星が通過した2005年6月9日には、同時に地上データも収集した。
その結果、同時に実施した地上データと衛星リモートセンシングデータは高い相関が認められた(R2>0.86)。画像プロセッシング手法と結果の評価はEradas Imageソフトウェアパッケージで行った。
No.2
- 氏名:
Dr.Dmitri Gudkov
Mr.Alexandr Nazarov
- 国籍:
ウクライナ
- 題名:
CHERNOBYL事故排他地帯内の湖沼エコシステムにおける放射性核種:10年の調査
- 論文要旨:
1997〜2007年、Chernobyl原子力施設の破壊部分の周囲10km以内の排他地帯の湖沼エコシステムにおける主要な放射性核種の分布、力学及び生物学的重要性について研究した。この研究では、Azbuchin湖、Dalekoye-1湖及びGlubokoye湖の湖底堆積物、水、微粒子及び異なった種の水生生物を主要な対象とした。
Chernobyl事故排他地帯内の湖の自己浄化は極端にゆっくりしたプロセスで進んでいる。それゆえ、湖の多くのエコシステム、水路及び生簀は、放射性核種の全項目で高い濃度レベルを保っている。湖エコシステムにおける全放射性核種量は、137Csの約98-99%、超ウラン性の元素(238Pu、239Pu、240Pu、241Am)の99%が湖底堆積物に濃縮されていた。堆積物中の90Srは、高い溶解性により、89〜95%となっていた。放射性核種の約2〜10%は水中に濃縮され、たった1%が生物相に濃縮されていた。この1%の値でも、種々の放射性核種は二枚貝軟体動物や水生植物には支配的な力を持つものであった。
Pripyat川の左岸の洪水平野からの放射性核種の流出を防ぐために建造されたダムの複雑な構造は、当該地域の水利学的な秩序の変化を暗示していた。水域内の水の流動性の減少、春の洪水や季節的な流出期間での沈水効果の消失は、ダムで仕切られた地域の浸水を増大させた。その結果、排他地帯内の集水域の土壌中における可動性90Srが増大する中で、ダム構築地点に位置する湖における水中の90Sr量や生物利用性が多くなる傾向があった。排他地帯内の湖での水生生物体への放射の長期的インパクトとしては、水生植物や軟体動物胚嚢の根分裂組織の細胞における高レベルの染色体被害が見られた。
No.3
- 氏名:
Mr.Henry Makoba Sumba
Dr.William Aino Shivoga
Dr.Scott Miller
Prof.Mucai Muchiri
- 国籍:
ケニア
- 題名:
ケニア、NJORO川における水質指標としての底生大型無脊椎動物の使用
- 論文要旨:
Njoro川に沿って行われている集約的農業や放牧をなどの人為的活動は、河川水の悪化をもたらしている。これは主に河川への負荷の流出増加によるものである。この河川は、周辺の集落やラムサール条約指定地点であるNakuru湖にとって、最も重要な淡水資源である。中流では、水質は徐々に悪化している。本研究では、指標として底生大型無脊椎動物を収集し、Njoro川の中流における水質を調べた。
Njoro川の10地点で試料を収集した。KenyattaとNgataは、全上流地点よりも水温は高かった。Boraでは、硝酸、アンモニア及び全窒素濃度が、乾期中を通じ、合流点及びNjoroの両地点よりも4倍以上高かった。Canners UpとBoraでは、全りん濃度が合流点及びKenyattaの2倍以上であった。底生無脊椎動物の高い濃縮度はNjoroで記録された。Egerton、Canners Up及びCanners Downでは、無脊椎動物の存在量は、雨期に比べ10倍以上少なかった。Chironomidae、Ologochaete、Morina sp及びCyclopoidaeには過密地点の特徴が見られた。本研究は、耐性のある種のみが乾期を通じて生息していることを示している。
No.4
- 氏名:
Mr.Alejandro
Juarez-Aguilar
- 国籍:
メキシコ
- 題名:
世界湖沼ビジョンに基づく、CHAPALA湖盆(メキシコ)のための行動計画の構築及び利用
- 論文要旨:
世界湖沼ビジョンに基づく、メキシコ、Lerma-Chapala湖盆のための行動計画を作成するための重要な取り組みが2006年に始動した。それは、メキシコと国際的な組織との提携の構築、18人の専門家(メキシコ人12人、外国人6人)を含めたワークショップの創設を伴っている。エキスパートの提案を分析・補足するため、全湖盆からの117人の参加者を集めたオープンフォーラムを併設した。
その結果、6項目の行動方針からなる行動計画が策定された。6つの行動指針は、最適な水利用;汚染の予防と制御;生物多様性保全と管理;湖盆管理のための社会的参加;モニタリング及び評価;持続可能な管理戦略である。2007年には、その行動計画が公開されたが、それは、連邦及び州政府関連機関、地方自治体、社会的グループ、大学が支持を目指して働きかけをしたものであり、また、技術集団が、短期・中期間に進展させるべきプロジェクトを明確にするために分析したものである。その結果、具体的なプロジェクトが推進・応用され;湖盆環境教育指針は実行の過程にある。また、10の研究機関が関与した研究者ネットワークが設立され、複数の賞を受賞した地域管理計画の再現を目指して、Chapalaの森林プログラムにも着手している。
No.5
- 氏名:
Ms.Maria Paz G.Luna
Ms.Vida Gonzales Pitargue
- 国籍:
フィリピン
- 題名:
管理計画における効果的な参加の試験
- 論文要旨:
開発途上国においては、保護された湖に対するほとんどの管理計画策定は、計画策定費用をまかなう外国の基金プロジェクトがある時にのみ行われる。その結果よく起こることは、その地域に居住、労働し、政治を実践する必要のある利害関係者との協議、交渉が極めて技術的で短いものになるということである。
フィリピンでは、地域参加、共同管理や出資者参加についての多くの議論が行われてきたが、住民が本当の意味で関わるということは長年の課題であった。
人間がエコシステムを完全に管理することは望むべくもなく、許容される範囲内でエコシステムに影響を与えることができるだけである。何が許容されるかは、社会に対して何の意味があるのかに基づいている。たいてい、官僚は、分りやすく薄い概要版だけでなく、厚く、技術的な計画も必要であると考えている。しかしながら、利害関係というのは計画後のコミュニケーションからではなく、計画の正に根幹部分関する交渉において生じるものである。技術的データは、出資者に提供されなければならず、かつ、彼らに意味のあるものでなければならない。