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更新日:2024年10月2日
水稲の高温対策技術については、基本技術の励行が非常に重要です。また、今後は、基本技術に加えて高温耐性品種の導入、複数品種による作期分散、病害虫の適期防除も効果的に組み合わせながら対応していく必要があります。
茨城県では、令和5年に「暑さに負けない米づくり」チラシを作成しました。本ページでは、チラシの掲載内容について解説しますので、これらの技術を組み合わせ、暑さに負けない高品質な米生産にご活用ください。
▶「暑さに負けない米づくり」チラシはこちらから(PDF:1,330KB)
令和5年産は夏季の記録的な高温により、白未熟粒をはじめとして水稲の品質が大きく低下しました。高温の影響を受けた令和5年産の作柄の振り返りと令和6年産に向けた対策や高温に対応した土壌管理について、こちらのページで分かりやすく紹介しておりますので、こちらも併せてご確認ください!
▶令和5年産水稲の作柄と6年産に向けた対策(外部サイトへリンク)
▶水稲高温障害対策としての水田の土壌管理(外部サイトへリンク)
熟期が同じ品種の作付けが多いと、同時期に出穂するため、高温の年では全体の品質が低下してしまうリス
クがあります。熟期の異なる早生や晩生品種を組み合わせることで、リスク分散や作業競合の解消などのメリ
ットがありますので、戦略的に組み合わせましょう。
また、早生や晩生に飼料用米や米粉用米などの新規需要米を組み合わせることでリスク分散とともに需要に
応じた生産を図ることができますので積極的に取り入れてみてください。
白未熟粒の中でも、乳白粒は高温によるものと、籾数過剰や日照不足といった養分競合によるものに分けら
れます。籾数は収量と密接に関係していますが、過剰な籾数は品質低下に結び付くことから、適切な時期の中
干しによる茎数制御が重要です。
中干しは、目標とする穂数の8割が確保できた時点で行います。「コシヒカリ」の高品質生産の目標穂数が
400本/㎡ですので、1株当たり18本程度が確保できた時点で開始しましょう。中干しの程度は、田面に軽くヒ
ビが入る程度とし、土ぼこりが舞うほどの中干しは控えましょう。
(↑中干し開始時期のイネの様子) (↑過剰な中干し)
出穂後の水稲は、籾に栄養を送る登熟期に入ります。この時期になると、根は生理的に弱くなっているた
め、間断かんがいなどの積極的な水管理で酸素を送り込み、根の活力を維持する必要があります。
間断かんがいは、概ね2日間湛水状態を維持し、1日間落水状態を保つ水管理方法ですが、圃場によって条
件が異なることから、自然落水後は、田面が乾く前に入水(指で触ると湿り気を感じる程度)という目安で行
うようにしましょう。
近年は、収穫期の刈遅れや乾燥時の高温により、胴割米の発生が懸念されています。「コシヒカリ」の収穫
開始の目安は帯緑籾率(緑色の籾の割合)が10%程度ですので、籾の状態を確認して適期に行うようにしまし
ょう。また、近年は経営面積の大規模化が進んでいることから、収穫する品種の後半の作業が刈遅れになる場
合には、全体の刈取りを3日程度早めに開始することで対応します。
乾燥作業も胴割米の発生に影響します。急激な高温乾燥は、玄米の外側と内側の水分差が大きくなり、亀裂
の原因になります。二段乾燥法は有効な技術ですので、高品質米生産では是非お試しください。二段乾燥法が
難しい場合は、乾減率0.8%以下、穀温40℃以下を目安に乾燥を行いましょう。
根の活力維持や養分供給という観点から堆肥の活用や深耕は重要です。堆肥の中でも、牛ふん堆肥は土壌改
良効果が高いことから、乾田では1t/10a、湿田では0.5t/10aを目安に積極的に施用しましょう。
また、近年は、全県的に作土が浅くなっている傾向にあります。作土が浅くなると根の張れる範囲が狭くな
り、それだけ栄養分の吸収も限られます。意識的に15cm以上の深耕を行い、根の健全化を図ることが、白未熟
粒の低減につながります。
近年は、各地で高温耐性品種の開発が進み奨励品種への採用が進んでいます。現在茨城県では、高温耐性を
有する奨励品種として、「一番星」、「ふくまる」、「にじのきらめき」を指定しています。
これらの高温耐性品種は、昨年の高温下においても「コシヒカリ」よりも品質の低下が抑えられていまし
た。具体的には、令和5年産の「コシヒカリ」の1等米比率が46.2%であった一方で、「一番星」で79.0%、
「ふくまるSL」で78.0%、「にじのきらめき」で75.3%という結果でした(農林水産省公表「米穀の農産物
検査結果」より12月31日現在のデータを引用)。
今後も夏期の高温の常態化が予想されていることから、高温による品質低下が著しい地域では、高温耐性品
種の導入を検討しましょう。
(↑令和5年産「コシヒカリ」) (↑令和5年産「一番星」)
(↑令和5年産「ふくまるSL」) (↑令和5年産「にじのきらめき」)
近年は、暖冬による越冬成虫の増加や夏季の高温・多湿条件によって病害虫被害の増加が懸念されていま
す。水稲では、斑点米カメムシ類や紋枯病等の被害が県内で増加傾向にあります。これらによる収量・品質の
低下を軽減するためには、病害虫の発生状況に合わせた適切な時期、適切な薬剤の選択が重要です。
病害虫の発生状況や防除方法については、茨城県農業総合センター病害虫防除所の病害虫発生予察情報から
ご確認ください(茨城県病害虫防除所のページはこちらから)。
斑点米カメムシ類による被害は水稲の出穂前後から確認され、主に斑点米といった品質低下や不稔による収
量低下が引き起こされます。県内で主に確認される斑点米カメムシ類には、イネカメムシ・クモヘリカメム
シ・ホソハリカメムシなどが挙げられます。
基本的な防除のポイントは以下のとおりです。
近年は、これらの斑点米カメムシ類の中でも、イネカメムシの発生が全県的に増加傾向にあります。イネカ
メムシは、主にイネの基部を中心に加害し、出穂直後に加害された場合、他のカメムシ類よりも不稔被害が大
きくなります。また、畦畔を経由せずに、直接水田内に飛来する特徴があることから、畦畔の草刈りの効果が
認められない可能性があります。これらのことから、イネカメムシの防除は本田防除が基本になることから、
水田内の発生状況を適時確認し、適切な薬剤を選択する必要があります。
▶(農林水産省)イネカメムシの被害にご注意ください(PDF:608KB)
(↑イネカメムシ成虫) (↑クモヘリカメムシ成虫)
(↑ホソハリカメムシ成虫) (↑斑点米)
紋枯病は、糸状菌によって引き起こされる病害であり、高温・多湿条件で発生が助長されます。病斑が進展
すると、茎葉が枯れあがり、倒伏の原因となります。育苗箱施薬剤や本田による薬剤防除が効果的ですが、過
剰な窒素肥料や栽植密度が原因となっている可能性もありますので、栽培方法にも留意しましょう。
基本的な防除のポイントは以下のとおりです(茨城県病害虫防除所のページより引用)。
(↑水稲の茎部に発生した紋枯病)
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