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更新日:2017年7月28日
耕種的防除法とは,作物の栽培法,品種あるいは圃場の環境条件などを適切に選択して,病害虫が発生しにくい条件を整え,発生抑制や被害軽減を行う方法です。作物や環境が本来有している,病害虫の発生を抑制する作用を効果的に活用する技術ですので,環境や農作物などに対して高い安全性を保てます。
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(1)抵抗性品種 | (2)抵抗性台木 | |||
(3)輪作,栽培体系 | (4)作期の移動 | |||
(5)有機物施用,土壌改良 | (6)環境管理 | |||
(7)圃場衛生 | (8)雨よけ栽培 |
病害や虫害は,作物の品種によって被害の発生程度に大きな差があり,各種作物で抵抗性を有する品種が育成されています。とくに,土壌伝染性病害,ウイルス病,線虫等に対しては数多くの抵抗性品種が実用化されています。
ウリ科やナス科の土壌病害や線虫に対しては,抵抗性品種や近縁種を台木にした「接ぎ木栽培」によって,被害を回避することができます。ただし,この方法は,台木と穂木との親和性があることが前提ですので,事前の確認が重要です。
同一作物の連作は,土壌の物理的,化学的条件の悪化だけでなく,その作物に感染,寄生する土壌病害虫の密度増大による被害が問題となります。したがって,線虫対抗植物を含め,他作物との輪作をすることが大切です。ただし,土壌病害虫のなかには複数の作物を侵すものや,土壌中で長期間生存するものがあり,他作物の導入や短期間の輪作・休作では回避できない場合があるので,病害虫の種類を見極めることが必要です。
病害の発生は,温度や湿度など環境要因に大きな影響を受けます。糸状菌や細菌による発病は,茎葉が長時間濡れていたり,傷ついたりすることによって助長されますので,それらの条件に遭遇する期間の栽培を避けることで発病を軽減できます。また,害虫の発生時期は,年次変動があるものの,おおむね決まっていますので,播種や定植時期を調整して被害を回避することができます。
有機物を施用することによって,土壌中の微生物相のバランスが保たれ,天敵生物の増加が期待できます。また,化学性,物理性の改善により作物の生育が旺盛となって,病害虫に対する抵抗力も増大します。さらに,土壌病害によっては,土壌改良資材を用いて土壌pHを調整することで,発生を抑制することができます。ただし,アルカリ土壌で発生の多くなる病害については,一般的な作物の生育が中性~アルカリ性で旺盛であるので,病害程度と生育との兼ね合いで土壌pHの調整を判断する必要があります。
多くの病害は,高湿度条件で発生が助長されます。したがって,適正な栽植密度,整枝,肥培管理などによって,過繁茂を避けることが大切です。また,施設栽培では,換気やマルチ被覆などによって過湿にならないよう努めなくてはいけません。灌水や液剤散布は,晴天の日の早い時間帯に行い,過度の灌水や施肥による根の傷み,軟弱・徒長を避けましょう。一方,害虫は高温・乾燥条件で多発するものが多いです。病害,虫害とも発生生態や種類・作型を理解したうえで,発生を抑制する環境を整える必要があります。
前作の作物残渣には,次作での発生源となる病原菌や線虫が付着しているおそれがあり,栽培終了後の処分には十分な注意が必要です。また,栽培期間中であっても,土壌伝染性や汁液,虫媒伝染性病害の発病株は,被害が拡大する前に抜き取って処分する必要があります。さらに,地上部病害も,伝染源となる発病部位を切除して,圃場内に放置せず処分することが重要です。トラクタのロータリなどの作業機械は,土壌病原菌や線虫による汚染拡大を防止するため,使用した後に必ず洗浄して汚染土壌を取り除きましょう。
作物の病気発生は,降雨と大きく関係します。トマト疫病やイチゴ炭疽病などは,水滴の跳ね上がりとともに病原菌が作物に感染して発病します。また,多くの病原菌は降雨によって多湿になると,胞子が発芽し,作物に侵入および感染しやすくなって,発病が助長されます。そこで,降雨による発病を制御する目的で,雨よけ栽培が行われています。なお,トマトでは,雨よけ栽培をするとCa欠乏症(尻腐れ症)などが発生しやすくなるので,灌水方法や石灰資材補給など栽培管理に工夫が必要になります。
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