《意見書》
若年層に広がるオーバードーズ対策の強化を求める意見書
国立精神・神経医療研究センターの調査では、過去1年以内にせき止めや風邪薬といった市販薬の乱用、いわゆるオーバードーズの経験がある高校生は、約60人に1人であることが明らかとなった。
また、厚生労働省の実態調査によれば、市販薬の乱用による救急搬送事例について、女性が8割を占め、薬物依存で治療を受けた10代患者のうち、市販薬の乱用によるものは、2014年ではゼロであったが、2022年では65.2パーセントを占めており、若年者、特に女性を中心としたオーバードーズの急増が深刻な社会問題となっている。
若年者がオーバードーズをしてしまう理由には、「つらい状況から解放されたかった」「死にたかった」など、背景には社会的孤立があると言われている。一般的なせき止めや風邪薬には、麻薬や覚醒剤と類似した成分がわずかに含まれている場合があり、大量に服薬すると気分が落ち着いたり、高揚したりする作用があることから、そのような生き辛さを抱える人はオーバードーズを始めてしまう。
しかし、オーバードーズは、意識障害や急性中毒を引き起こすだけでなく、最悪の場合には命に関わるおそれもある行為であり、その危険性を啓発するとともに、乱用するおそれのある医薬品を購入する際の規制を厳格化するなどの対策が急務となっている。
よって、国においては、若年層に広がるオーバードーズ対策のため、下記の事項について特段の措置を講じるよう強く要望する。
記
- SNSの活用や学校における広報・啓発活動の充実など、若年者や女性に対するオーバードーズの有害性・危険性に関する正確な情報の普及・啓発を行うこと。
- 若年者がオーバードーズをしてしまう背景にあるとされる、社会的孤立などの個人の悩みや問題に対応する相談体制の強化を図ること。
- 乱用等のおそれのある医薬品について、「医薬品の販売制度に関する検討会」において取りまとめられた結果を踏まえ、法制化に向けた審議を速やかに進めること。
医薬品の安定供給確保及びイノベーション推進を求める意見書
国民の命と健康に関わる医薬品について、一部メーカーの製造管理及び品質管理の不正問題に端を発した供給不足は、需給のひっ迫に加え、政府の頻繁な薬価改定に伴う薬価引下げや昨今の原材料価格の高騰に伴うメーカーの採算悪化によって、実に3年以上にわたり供給不安が継続している。
この間、医療機関や薬局においては、医薬品の入手が極めて困難となっており、必要な薬が患者に届かない事態を招くなど、国民の命と健康に影響を及ぼしかねない事態が発生している。
また、我が国におけるワクチンや治療薬の開発は、コロナ禍の下、諸外国から後れを取るなど、イノベーション創出力の低下も明らかとなっている。
こうした事態を踏まえ、国においては、供給不足の医薬品を早期に安定供給できるようメーカーへの増産要請を行うなど、様々な対応を講じているが、依然として深刻な状態が継続している。
現下の医薬品の供給不安を一刻も早く解消し、将来にわたり、国民に安定的に供給し、かつイノベーション創出を促すためには、設備投資や人的投資を困難に陥らせている現行制度の見直しを図る必要がある。
よって、国会及び政府においては、中間年改定の廃止を含めた薬価制度の抜本的な見直し、さらには、医薬品の安定的な供給に必要な、設備投資や人的投資への支援を拡充するなどの取組やイノベーション創出力の強化が図られる財政支援を行うよう強く要望する。