《意見書・決議》
- 地方財政の充実・強化を求める意見書
地方自治体には,医療・介護など社会保障への対応,子育て支援策の充実,地域交通の維持・確保など,より多く,またより複雑化した行政需要への対応が求められている。
しかし,現実に公的サービスを担う人材不足は深刻化しており,疲弊する職場実態にある中,新型コロナウイルス感染症対策や近年多発している大規模災害,そのための防災・減災事業の実施など,緊急な対応を要する課題にも直面している。
こうした地方の財源対応について,政府はいわゆる「骨太方針2018」で,2021年度まで,2018 年度の地方一般財源総額の水準を下回らないよう,実質的に同水準を確保するとしている。実際に2020 年度地方財政計画の一般財源総額は63 兆4,318 億円,
前年比+1.2%と,過去最高の水準となった。しかし,人口減少・超高齢化にともなう社会保障費関連をはじめとする地方の財政需要に対応するためには,さらなる地方財政の充実・強化が求められている。
このため,2021 年度の政府予算と地方財政の検討にあたっては,歳入・歳出を的確に見積もり,地方財政の確立をめざすよう,政府に以下の事項の実現を求める。
記
- 社会保障,感染症対策,防災,環境対策,地域交通対策,人口減少対策など,増大する地方自治体の財政需要を的確に把握し,これに見合う地方一般財源総額の確保をはかること
- 子育て,地域医療の確保,介護や児童虐待防止,生活困窮者自立支援など,急増する社会保障ニーズへの対応と人材を確保するための社会保障予算の確保および地方財政措置を的確に行うこと。
- 新型コロナウイルス対策として,新たに政府が予算化した「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」や「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」については,2020 年度の補正予算にとどまらず,感染状況や自治体における財政需要を把握しつつ,2021 年度予算においても,国の責任において十分な財源を確保すること。
- 地方交付税の算定における地方の歳入歳出の効率化を議論する場合は,地域の実情に十分配慮するとともに,住民生活の安心・安全が確保されることを前提として,本来交付税に求められる財源保障機能が損なわれないようにすること。
- 「まち・ひと・しごと創生事業費」として確保されている1 兆円について,引き続き同規模の財源確保をはかること。
- 2020年度から開始された会計年度任用職員制度における当該職員の処遇改善に向けて,引き続き所要額の調査を行うなどして,その財源確保をはかること。
- 森林環境譲与税の譲与基準については,地方団体と協議を行い,林業需要の高い自治体への譲与額を増大させるよう見直すこと。
- 地域間の財源偏在性の是正にむけては,偏在性の小さい所得税・消費税を対象に国税から地方税への税源移譲を行うなど,抜本的な改善を行うこと。また,各種税制の廃止,減税を検討する際には,自治体財政に与える影響を十分検証したうえで,代替財源の確保をはじめ,財政運営に支障が生じることがないよう対応をはかること。
- 地方交付税の財源保障機能・財政調整機能の強化をはかり,市町村合併の算定特例の終了への対応,小規模自治体に配慮した段階補正の強化など対策を講じること。
- 地方財政は依然として4 兆5,000 億円強と前年度を超える規模の財源不足があることから,地方交付税の法定率を引き上げ,臨時財政対策債に頼らない地方財政を確立すること。