《意見書・決議》
令和元年台風第15号及び第19号をはじめとした一連の記録的な暴風・大雨等により,本県においては人的被害をはじめ,那珂川や久慈川など多くの河川で堤防の決壊や越水があり,多くの家屋や事業所が全壊・半壊や床上・床下浸水の被害に遭うなど,甚大な被害が発生した。また,鉄道や道路等の公共施設,農作物や農業用施設等も被災し,いずれも極めて深刻な状況にある。
本県では,平成27年9月関東・東北豪雨の際にも,鬼怒川の決壊をはじめ甚大な被害を受けたことが記憶に新しいところである。
このように,異常気象は常態化していると言っても過言ではなく,今回のような大規模な台風等は,今後も頻発することが予想される。そのため,早期の復旧復興はもとより,災害に強い産業基盤を構築するなど,今後に備えた十分な対策を講ずる必要がある。
以上を踏まえ,国においては,住民の安全・安心な日常生活が一刻も早く取り戻せるよう,また,今後予想される災害時に被害を最小限にとどめ,人命・経済・暮らしを守ることができるよう,別記の事項について特段の措置を講じられるよう強く要望する。
別記
- 1 被災者に対する支援
- (1) 被災者の生活再建支援(内閣府,国土交通省)
被災者生活再建支援法の適用範囲を拡大するなど,市町村の区域に捉われることなく,同一災害の被災者が等しく支援を受けられるよう制度改正を行うこと。
また,同法の支援金の支給にあたっては,対象となる被災世帯を「全壊」,「大規模半壊」に限定せず,「半壊」世帯にも拡大すること。 - (2) 被災した農業者・農業関連施設への支援(農林水産省)
被災した農業者が速やかに営農再開できるよう,災害復旧事業の補助率の嵩上げ,農業用施設・機械などの再建・修繕及び保管米の浸水被害を受けた農家への支援等の支援対策の周知や迅速な手続きの実施に配慮すること。
また,被災した農業者の経営安定を図るため,農作物被害に伴う収穫量の減少による損失等に対して支援を行うこと。 - (3) 被災中小企業等支援(経済産業省,観光庁)
今回の台風の被害については,地域経済において重要な役割を果たしている中小企業・小規模企業に対して,甚大な影響を及ぼしており,事業活動の継続が危ぶまれる状況となっている。
このため,事業者に対して,隣県や市町村間での格差が生じないよう,被災した施設・設備等の復旧・復興に必要な予算を確保するとともに,すべての地域に激甚災害法に基づく措置を講ずるなど,必要な支援策を実施すること。
さらに,被災地域においては,風評被害や交通機関の被害による旅行控え等により観光消費減少の長期化が懸念されることから,観光需要の継続的な回復を図るため,観光事業者等への助成制度の拡充を図ること。 - (4) 被災した職業訓練受講者支援にかかる財政措置(厚生労働省)
今回被災した職業訓練受講者等に対する支援措置として,職業能力開発校における普通課程の普通職業訓練及び職業能力開発短期大学校における専門課程の高度職業訓練を受講する訓練生に対し,授業料等の免除措置を実施した場合,職業能力開発施設運営費交付金として,別途措置すること。
- (5) 高等学校等就学支援金の被災者への対応(文部科学省)
高等学校等において,家庭の教育費負担軽減を図るため,授業料に係る費用を支援する制度である高等学校等就学支援金について,所得制限により対象外となった家庭が被災した場合に支援金の対象となるよう,所得制限を見直すこと。
- (1) 被災者の生活再建支援(内閣府,国土交通省)
- 2 災害からの復旧
- (1) 抜本的な河川改修の推進(国土交通省)
那珂川,久慈川及び利根川等において,流下能力の大幅な向上が図れるよう,抜本的な河川改修を推進すること。
また,大規模な浸水時に内水を排水するポンプや調節池などの浸水対策施設の整備に対して,必要な支援を行うこと。 - (2) 公共土木施設等の災害復旧(国土交通省)
洪水に伴い大きく被災した河川や道路等の公共土木施設の早急な復旧に配慮すること。
- (3) 久慈川の復旧支援(国土交通省)
久慈川(県管理区間)において,国による本格的な復旧を図ること。
- (4) 常磐道水戸北スマートインターチェンジの早期復旧(国土交通省)
那珂川の氾濫により水没し,上下線で通行止めが続く常磐道水戸北スマートインターチェンジの早期復旧に必要な支援を行うこと。
- (5) JR水郡線の早期復旧(国土交通省)
県北地域の重要な公共交通インフラとして,通勤・通学や観光輸送を担うJR水郡線においては,橋梁の流失など線路設備等に深刻な被害が生じていることから,全線の早期復旧を図るとともに,十分な財政支援を行うこと。
また,公共交通機関の正常な運行が回復するまでの期間において,必要な生活交通を円滑に確保できるよう,交通事業者又は地方自治体が実施する代替交通の確保について必要な支援を行うこと。 - (6) 災害廃棄物の処理(環境省)
被災地域においては,今回の災害により大量の廃棄物が発生しており,その処理のために過大な負担を強いられることから,必要な費用の全額を国が支援すること。
- (7) 大子町衛生センターの復旧支援(環境省)
河川氾濫により機能を停止した大子町衛生センター(し尿処理施設)については,今後の災害に備え,敷地の嵩上げによる新設が必要不可欠であり,早期の整備に向け必要な支援を行うこと。
- (8) 医療施設,社会福祉施設等の災害復旧(厚生労働省)
医療資源が著しく乏しい県北地域をはじめ,各地域の医療施設や社会福祉施設等が被災していることから,災害復旧補助金に係る次の事項について特段の措置を講じること。
- 地域の医療・福祉を支えている医療施設や社会福祉施設等については,全ての施設等を補助対象とすること。
- 全ての医療施設や社会福祉施設等に対して,建物及び建物附属設備,設備,機器に限らず,備品,消耗品など復旧にかかる全ての費用を補助対象とすること。
- 全ての医療施設や社会福祉施設等を対象として,補助率の嵩上げを行うこと。
- (9) 保健衛生対策(厚生労働省)
感染症の発生・まん延を防止するための感染症予防事業を支援するとともに,消毒や害虫駆除等に必要な薬品の供給について配慮すること。
- (10) 水道施設の災害復旧(厚生労働省)
水道施設の冠水などが発生していることから,上水道施設災害復旧費及び簡易水道施設災害復旧費について,補助率の嵩上げ及び査定事業費条件の引下げ並びに全ての復旧経費を対象とすること。
- (11) 学校施設等の災害復旧(文部科学省)
学校施設(私立学校を含む)や社会教育施設等の早期復旧のため,国庫補助率の上乗せなど配慮すること。
- (12) 交通安全施設の災害復旧(警察庁)
被災した信号機等の交通安全施設を早急に復旧させるため,補助要件の緩和や国庫補助率の嵩上げについて配慮すること。
- (1) 抜本的な河川改修の推進(国土交通省)
- 3 財政措置
- (1) 災害復旧に係る地方財政措置(総務省)
地方公共団体が被災者支援などのために,必要な財政需要に柔軟かつ的確に対処できるよう,特別交付税の増額について配慮すること。
- (2) 社会資本整備財源の十分かつ安定的な確保(国土交通省)
国及び地方の社会資本整備財源の十分かつ安定的な財源を図ることにより,災害に強い国土づくりを着実に進めること。
特に,今回の災害において国や県が管理する公共土木施設の多くに被害が生じたことから,各施設の整備等の迅速化を図ること。
- (1) 災害復旧に係る地方財政措置(総務省)