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更新日:2013年7月3日
海岸/海岸法/海岸事業/高潮/海岸侵食/津波/海岸保全区域/海岸保全施設/海岸堤防・海岸護岸/消波工/消波堤/突堤/離岸堤/人工リーフ/ヘッドランド/漂砂/養浜/サンドバイパス・サンドリサイクル
陸と海と相接する地帯を海岸といい、広義には浜から陸に向かってわずかの広さを有する地帯、狭義には陸地の傾斜が海に向かって急になった海岸断崖部を指すが、一般的には、その範囲は明確になく、通常海岸線一帯を海の部分を含めて海岸あるいは沿岸と呼ぶことが多い。
海岸行政において、海岸延長を体系的には把握し、名称の統一を図るため、海岸を大・中・小に分類している。大分類に該当する海岸を沿岸、中分類を海岸、小分類を地区海岸という。
海岸工学において対象とする範囲は、内陸との境界から海岸線を超えて沖合数キロメートルまでの部分をいい、その典型的な断面を下図に示す。
海岸線は、一般には海と陸との境界をいうが、海岸工学上は波や潮汐などの作用が及ぶ限界、例えば、崖の根元などをいい、これらから陸側が海岸であり、この海側の砂又は礫(レキ)の部分を海幅の部分を含めて浜という。これに対し、海水面と海浜との境界線を汀線という。汀線は変形と潮位変化によって常に変動しているが、潮汐の高さにより干潮汀線及び満潮汀線と呼ばれている。
海岸法は昭和31年5月に制定され、津波、高潮、波浪等の被害及び全国的に顕著化している海岸侵食から海岸を防護することを目的とし、防護のための海岸保全施設の整備、管理等に係わる事項について定められた法律である。しかし、最近頻発している油流出への適切な対応、自動車の乗り入れ等による海岸環境の破壊から貴重な動植物の生息・生育環境を保全する制度にはなっていないことや、長大な海岸線に比し海岸保全区域以外の海岸については法律の対象となっていないことなどの問題点があった。また、海岸管理における地域の意見の反映、国と地方の役割分担の明確化等が必ずしも十分なされていなかった。
このような状況から、防護・環境・利用の調和のとれた海岸を形成するため、平成11年に法目的の改正を行い、国有海浜地をすべて法の対象とするとともに、計画制度の見直し、市町村参画の促進、国による直轄管理制度の導入等を行う海岸管理の制度全体の抜本的見直しを行った。
海岸事業は、海岸法に基づき海岸保全区域内における津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護し、国土を保全することを目的として、海岸の管理及び海岸保全施設の整備を図る事業である。
一般に気圧低下による海水の吸上げと、風の吹き寄せ等による海水の堆積作用により海面が異常に上昇する現象をいう。
海岸侵食とは汀線が後退したり、前浜の部分が減少あるいは消失したり、浜がけが削られ後退することをいう。
海岸線は本来侵食されやすいものであり、適当な土砂の補給が無い限り緩慢な侵食が進んでゆくと考えられている。特に河川の流出土砂量が減少したり、隣接海岸の自然的人工的変化によってそこから供給される砂礫の量が減少したりすると侵食は助長される。
地震による海底の地殻変動、海底火山の爆発などにより、海面が一時的に上昇・下降し、この海面変化が比較的波長の長い波となって海面を伝播する現象をいう。津波は浅海部では海底地形の影響などを受け、波高が急速に高くなり、陸上に達すると斜面に沿って這い上がる遡上現象を起こすことがある。
高潮、波浪、津波その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護し、もって国土の保全に資するため必要があると認めて都道府県知事が指定した一定の海岸の区域をいう。
海岸法に基づき指定された海岸保全区域内にある堤防、護岸、突堤その他海水の侵入又は海水による侵食を防止するための施設をいい、別に認定その他の手続きにより特定される措置はとられず、当該施設の設置者、管理者又は所有者のいかんを問わない。主な海岸保全施設としては、海岸堤防、海岸護岸、突堤、離岸堤、人工リーフ、消波工、ヘッドランド等がある。
高潮や津波あるいは高波等によって海水や波が陸地に侵入し、あるいは陸地を侵入したりするものを防ぐ目的で、海岸線付近に設けられる構造物であって、現地盤を盛土又はコンクリート等によって高くして高潮や津波の侵入を防止するとともに侵食を防止する施設を海岸堤防といい、現地盤を被覆し土砂が持ち去られるのを防ぐ施設を海岸護岸という。
波のうち上げ高、越波及びしぶき、波力、波圧、波の反射などを減少させる目的で、人為的に波のエネルギーを減殺し消波させるために、堤防又は護岸などの前面に設置された構造物をいう。
▲消波工(日立市 小木津海岸)
消波堤は、汀線付近もしくはこれより陸側に設置し、背後の土砂等の流失抑制、消波又は波高減衰させることにより、汀線又は崖の後退を防止する構造物をいう。
▲消波堤(北茨城市 大津海岸)
主として沿岸漂砂が卓越する海岸において、汀線から直角方向に突き出して設けられた構造物で、沿岸漂砂を制御することによって海浜の安定化を図る。
汀線より沖の方へ離れてほぼ海岸線に平行に設ける堤状の構造物で、その効果は2つある。1つは、波を消す機能、あるいは波の勢いを弱める機能で陸上部への波の侵入を防ぐ効果がある。もう1つは、海岸の砂が沖に流出することを防ぎ、背後に砂をためる効果がある。しかし、海岸線近くに設置すると、景観上の阻害要因になる場合がある。
▲突堤と離岸堤(ひたちなか市 阿字ヶ浦海岸)
亜熱帯地方の海岸に見られるサンゴ礁(coral reef)の有する優れた波浪制御機能に着目したもので、沖合いの海中に、没する構造物を人工的に築造することにより波を消波させ海浜の安定化を図る。景観を損なうことがないので、海岸環境の保全、多様な海浜利用との調和が図れる。
▲人工リーフと離岸堤(北茨城市 磯原海岸)
※左側2基:人工リーフ、右側2基:離岸堤
天然の岬地形に囲まれた海岸が長期間に安定な砂浜を維持できる原理を応用するもので、平坦な海岸線の比較的長い海岸侵食にヘッドランド(人工岬)群を設置し、隣り合うヘッドランドの間をポケットビーチ化し、波浪エネルギーを分散させ、砂浜の安定化を図る。
▲鹿島灘のヘッドランド群(鹿嶋市)▲ヘッドランドの原理:天然の岬地形(京都府上野平海岸)
波の流れなどの作用によって、海岸あるいは海底の土砂は常に移動している。この移動している状態を漂砂、漂砂移動あるいは漂砂現象などともいう。
海岸に砂などを人工的に供給し、海浜の造成を行うこと。
海岸に港などの構造物がつくられた場合、砂の流れ(漂砂)が港によってせき止められ、海岸は沖に向かって前進する(左図①)。逆に流れの下手にあたる港の反対側の海岸では本来流れてくるはずの砂がこなくなり、流れ出ていくばかりとなる。その結果、海岸線は陸側に後退し侵食を受ける。(左図②)。
そこで、港の上手にたまった砂を侵食された港の下手側の海岸に人工的に移動させ、砂浜が復元する。このような工法をサンドバイパス工法と呼ぶ。
また、右図にように流れの下手側に砂がたまり、上手側の海岸で侵食を受けている(右図①)場合に、下手海岸にたまった砂(右図②)を上手海岸に戻し、砂浜を復元する。この工法をサンドリサイクル工法と呼ぶ。
[出典]
2002年版海岸便覧(一般社団法人全国海岸協会)
2003~2004海岸ハンドブック(一般社団法人全国海岸協会)
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